最も大事なことは、菅氏が正義と公正を強く求めるリーダーであることを単なる言葉ではなく行動で示すことだ。

 そのために、最も効果的なのは、森友学園問題の再調査だろう。原因究明と政治家を含めた責任者の特定、再発防止策の実施まで行えば、官僚の意識も一気に変わり健全化することが期待される。

 ところが、菅氏は自民党総裁選立候補の会見で森友問題についての再調査を否定し、その理由に「森友問題については財務省で調査、処分が行われ、検察の捜査も行われている」ことを挙げた。「捕まらなければよい」という安倍総理の倫理規範の継承ではないか。

 菅氏は、安倍総理の腐った倫理規範を是正するせっかくのチャンスをふいにした。官僚たちは、「安倍政権と同様、政権に都合の悪いことは隠し通せ」というメッセージだと受け止め、不正はさらにはびこることになるだろう。日本の官僚機構の危機は解消されるどころか、さらに深刻化することは確実になってしまったようだ。

週刊朝日  2020年9月25日号

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談社文庫)など

著者プロフィールを見る
古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

古賀茂明の記事一覧はこちら