逮捕された伊勢谷友介(C)朝日新聞社
逮捕された伊勢谷友介(C)朝日新聞社

 俳優の伊勢谷友介(44)が9月8日、大麻取締法違反(所持)容疑で警視庁に現行犯逮捕され、改めて芸能界の“薬物汚染”が続いていたことを示した。映画監督や社会貢献活動を行うなどマルチな顔を持つ伊勢谷の供述をきっかけに、「大麻合法」をめぐる議論が起きている。

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 警視庁は大麻を使用しているとの情報から内偵捜査を進め、この日に東京都目黒区の自宅を捜索。乾燥大麻約20グラムと吸引具が見つかるなどし、伊勢谷は「自分が吸うために持っていたもの」と容疑を認めた。

 さらには「大麻についての認識は、日本では法に触れることは理解しています」と意味深な供述。するとインターネット上では、大麻による逮捕について賛否が飛び交った。

 医療大麻の啓発活動をする一般社団法人「GREEN ZONE JAPAN」代表理事で医師の正高佑志氏は語る。

「海外先進国では、大麻の単純な所持での逮捕は珍しくなっています。昨年には国連が薬物所持の“非犯罪化”を推奨する声明を出していますし、日本は大麻に関する政策は後進国と言えます」

 非犯罪化とは「違法ではあるが刑罰は科されない」ということだ。「未成年による喫煙や、歩行者の信号無視と同じと捉えてもらうとわかりやすい」と正高氏。とはいえ、多くの日本人は大麻を「危険な薬物」「依存症」などネガティブなものとしている。違法なのだから当然だ。

 正高氏はこれに対し「前提にあるその認識がそもそも時代遅れ。大麻取締法ができたのは1948年。大麻に関する研究が本格化したのは60年代以降です。今では、たばこやお酒に比べても有害性が低いというのは科学的な定説。大麻に害がないとは言いませんが、時代にそぐわない法律です」と主張する。

 伊勢谷にこうした認識があったかどうかは不明だが、芸能界に大麻を含めた薬物が蔓延しているのは事実だ。今回の逮捕について「以前からうわさが出ていたため、驚きはなく、『やっぱりな』という意見が業界内ではほとんど」と語るのは芸能ジャーナリストの佐々木博之氏だ。「芸能界では大麻がより身近なものになっているような気がします。感覚が研ぎ澄まされるとして、創作活動で大麻を使用するアーティストがいるという話はよく聞きますね」

 伊勢谷は東京芸術大学出身の芸術家肌だけに、「大麻への認識は通じるところがあったのかもしれない。大麻は違法薬物から外してもいいんじゃないかという世界の空気からも、犯罪だという意識が希薄になっていたのでは」(佐々木氏)。あくまで日本では違法。それを忘れてはならない。
(本誌・秦正理)

*週刊朝日 2020年9月25日号

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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