行政による強制執行がなされた名古屋市内の“ごみ屋敷”(c)朝日新聞社
行政による強制執行がなされた名古屋市内の“ごみ屋敷”(c)朝日新聞社
ためこみ度チェックリスト (週刊朝日2020年9月18日号より)
ためこみ度チェックリスト (週刊朝日2020年9月18日号より)

「“ごみ屋敷”になった実家を片づけてほしい」と清掃会社への依頼が増えている。実は、片づけられないのは、脳の情報伝達機能の低下から起こる「ためこみ症」かもしれないのだ。若者から高齢者までを悩ます、ためこみ症とは? 片づけ役の家族がしてはいけないNG行動も紹介する。

【チェックリストはこちら】一つでも当てはまれば、ためこみ症の可能性が…

 ためこみ症は、「処分」が苦手だ。

 恋人との初デートなど思い出がない限り、映画や美術館の半券など、たいていは捨てるだろう。

 だが、「何を見たのか思い出せないから、絶対に捨ててはいけない」と自宅に持ち帰り、机の上に山積みになってゆく。

「絶対」「いつも」など考え方が固定化していたり、極端な面もある。不安を解消しようと、ためこみに拍車がかかるのだ。

 脳外科医として認知症やうつ病の診察を行う「おくむらメモリークリニック」の奥村歩院長が、「ためこみ」のメカニズムを説明する。

「幼い子どもがミニカーやドングリを集めるように、動物や人間には、モノや食糧を集め、ためこむ習性があります。その行動をとる間は、脳から快楽物質が分泌されるため、本人は気分がよくなります。だが成長とともに理性をつかさどる前頭葉が発達して、『こんなに集めても仕方がない』と判断できるようになり、ためこみ行動は落ち着きます」

 だが、年をとり、認知症になると、理性をつかさどっていた前頭葉が萎縮する。すると子ども時代に戻るかのように、収集を再開することもあるという。

「ごみ捨て場からテレビをいくつも拾ってきては、自宅をいっぱいにしたり、公園のギンナンや死んだセミを大量に拾ってくるケースが多い。倫理観や道徳観念は、ほぼ残っているので、人のモノには手を出さないが、同じモノを集め続ける常同行動としてあらわれます」(奥村院長)

 同居する家族が、困り果てた末に本人に処分を打診しても、

「たいていは拒絶されます」(臨床心理学の立場から、ためこみ症の研究に携わってきた上越教育大学大学院の五十嵐透子教授)

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