アイドルが演技活動をするのが当たり前になった昨今。かつては、海外へ輸出する際大きなインセンティブになることからキャスティングするという大人の事情もあったが、最近は、その華やかさに加え、専門俳優顔負けの演技力を持つアイドルも増え、「演技ドル」と呼ばれ、ドラマ界で引っ張りだこだ。

「アイドルは、コンサートなどたくさんのスタッフと一緒にものを作り上げる経験が豊富なので、現場で年上の人たちとコミュニケーションをとるのがうまい。吸収力も向上心も高いため、演技力の伸び率が高いんです。例えば、現在入隊中で25歳のBTOBのユク・ソンジェは、『サンガプ屋台』『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』など話題作に脇役で出演し、いい先輩たちから学ぶことで、どんどん俳優として伸びています」(「韓国TVドラマガイド」編集チーフ・高橋尚子さん)

 ユク・ソンジェのようなアイドル出身俳優は、これまで二番手や脇役が多かったが、ウェブドラマやケーブルテレビ局のオリジナルドラマの増加により、近年、主演を張るチャンスも増えた。現役アイドルの中でも、“顔の天才”の異名を誇る23歳のASTRO・チャウヌ(「新米史官ク・ヘリョン」)や、24歳のSF9・ロウン(「偶然見つけたハル」)などが、続々と主演ドラマをヒットさせている。

 現在、28歳で兵役中のZE:Aのパク・ヒョンシクが代表格だ。大ヒットしたドラマ「花郎」でパク・ソジュンと共演し、韓流四天王の一人、チャン・ドンゴンと共演した「SUITS/スーツ~運命の選択~」も話題をさらったが、19年6月10日に兵役入隊、21年1月4日に除隊予定だ。

「パク・ヒョンシクは『ナイン~9回の時間旅行~』でわずかな出演シーンながら強い印象を残したことで、次につなげました」(高橋チーフ)

“子役出身”で成功した好例が、GOT7の25歳のジニョンだと高橋チーフは言う。

「主人公の少年時代を演じた『愛するウンドン』や『青い海の伝説』での演技は、とても引き込まれました」(高橋チーフ)

 9月21日からMnetで日本でも放送開始の「花様年華~人生が花になる瞬間~」では、主人公の大学生時代を演じ、甘酸っぱい初恋模様をみせ、「国民の初恋」の異名を取った。韓国の高校生の間では“ガチ恋枠”との声も聞こえてくる。

「正統派の役もコミカルで明るい役もこなしているので、制作サイドから信頼と期待もあるのではないかと思います。俳優としても、今後の活躍が期待できるアイドルの一人です」(高橋チーフ)

 子役出身から演技派アイドルまで、層の厚い“U-30俳優”から、目が離せない。発売中の週刊朝日ムック『韓流ドラマ・ファンブック 私が愛したスター』でグラビア&インタビューなどさらに詳報している。

週刊朝日  2020年9月18日号より抜粋