拘縮期は、動かさず安静にしているのが大原則。痛みが強ければ、ステロイドを肩関節に注射して痛みを止める。一般的な痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)は効きにくい。実は、近医師が指摘する、五十肩でもっとも多い誤解は、「痛くても肩を動かしたほうがいい」だ。

「ぎっくり腰だと安静にするのに、なぜか肩に関しては、“痛くても動かしたほうがいい”と、肩をグルグル回そうとする患者さんがとても多い(笑)。炎症が広がり、かえって症状を悪化させてしまいます。拘縮期は動かさないのが正解です」

 反対に、リハビリが必要なのが慢性期。ここで頑張るかどうかで、早く回復できるかが決まる。

 慢性期の治療で近医師が注目しているのが、「サイレント・マニピュレーション」という手技。肩から腕につながる神経にブロック麻酔をし、痛みをとった状態で腕を動かす。

「固まった関節を無理に動かすので、靱帯が切れてバリバリという音がしますが、心配ありません。治療後、麻酔が切れると痛くなるので、それを予防するために、肩関節にステロイドを注射します」

 サイレント・マニピュレーションは、ゆっくりと可動域を広げていくリハビリより、治療期間が短くてすむという利点がある。仕事や介護などで早く改善したい人や、リハビリをやっても効果が出ない人に向いている。なお、この治療はどこの医療機関でも受けられるわけではないので、ホームページなどで確認を。

 注意したいのは、「自分は五十肩だ」と思い込んでいるケース。意外と肩痛を起こす肩の病気は多く、自己診断は禁物だ。

 近医師が指摘する。

「転んで手をついたなど、ケガによって関節が硬くなる『外傷性肩関節拘縮』や、糖尿病が原因となって起こる『糖尿病性肩関節拘縮』などは、五十肩に似た症状になります。特に糖尿病性の場合は、関節のリハビリだけでなく、血糖コントロールも必要になります」

 東京スポーツ&整形外科クリニック(東京都豊島区)院長の菅谷啓之医師も、最近気になっている中高年の肩痛があるという。

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