肩の可動域を調べる診察をする菅谷啓之医師 (提供/菅谷医師)
肩の可動域を調べる診察をする菅谷啓之医師 (提供/菅谷医師)
肩痛を引き起こす主な病気 (週刊朝日2020年9月18日号より)
肩痛を引き起こす主な病気 (週刊朝日2020年9月18日号より)

 腕を上げようとすると肩に強い痛みが走り、それ以上は上がらない。そんな症状のある中高年の多くは、「五十肩だ」と決めつけてはいないだろうか。たしかに肩痛といえば、五十肩は最も典型的な病気かもしれないが、痛みの原因はそれだけに限らない。別の病気が潜んでいる可能性がある。

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 五十肩とはどんな病気なのか。肩と肘(ひじ)の疾患に詳しい、こん整形外科クリニック(新潟市)院長の近良明医師は、「五十肩には広い意味と狭い意味がある」とした上で、こう説明する。

「50歳前後の人の肩痛や肩の動きにくさの総称が、広義の五十肩。狭義の五十肩は“ケガや病気などのきっかけがなく、腕が上がらなくなった状態”です」

 この状態を四十肩と呼ぶ人もいるが、それは間違いで、40代でも、五十肩という。

 五十肩の原因は不明で、老化と一言で片付けることはできない。だが、次のようなメカニズムで起こることはわかっている。

 肩関節は、ボール状の上腕骨頭にカップ状の肩甲骨がかぶさっている関節だ。その周囲を関節包という靱帯(じんたい)が覆っている。本来なら、この上腕骨頭と肩甲骨との間に、少し空間があるが、何らかのきっかけで関節包がぎゅっと縮んでしまうと動きが制限され、無理に動かそうとすると痛みが生じる。日中より夜間に痛くなることが多い。

 どういう人がなりやすいかはよくわかっておらず、利き手と関係なく起こる。日々、運動をしているから大丈夫、というわけでもなさそうだ。もう一つ言えそうなのは、姿勢が悪い人がなりやすい傾向があるということ。背の人は要注意だ。

 五十肩の診断では、問診(最近、転んで手をついたか、など)と、肩をいろいろな方向に動かして可動域をみる触診が重要で、必要に応じて超音波検査やX線検査などの画像検査を行う。

 五十肩は放っておいても自然に治る。治療が必要なのは、痛みなどで日常生活に支障が出たときなどだ。

 治療は段階によって異なる。近医師によると、炎症による痛みが強くどんどん硬く固まっていく「拘縮(こうしゅく)期」と、炎症は治まったが関節が固まって動かなくなった「慢性期」、少しずつ動きが戻る「回復期」がある。

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