「安倍首相にとっては石破(茂)氏に勝たれて森友・加計などの問題を再調査されるのが、最も避けたい展開。菅氏と二階氏を切れば、2人に石破氏をかつがれる可能性がある。すでに党内は『岸田では選挙に勝てない』というムードで、岸田氏では石破氏に負けるかもしれない。体調面の不安もあり、安倍首相に菅─二階同盟と事をかまえる気力はもうなかった」(自民党幹部)

 二階氏は6月、石破派の政治資金パーティーでの講演を約束するなど、石破氏と急接近していたが、これも巧妙な「見せ球」だった。二階派幹部は言う。

「石破派の数はいつまでたっても19人。党内の支持が増えない以上はどうしようもない。『急に自分のところに来て、応援をと言っても、無理だ』が二階氏の本音でした」

 そうと知らない安倍首相は、岸田氏への禅譲を断念。周囲に「次は菅さんに」と漏らすと、「勝ち馬」に乗り遅れたくない細田派、麻生派、竹下派などの各派閥が雪崩をうって「菅支持」を表明。こうして総裁選レースの大勢は、わずか3日で決まってしまった。

 安倍首相にハシゴを外されたかたちの岸田派幹部はこう話す。

「安倍首相の辞任表明があって麻生(太郎・財務相)さんに総裁選出馬の支援を求めて挨拶に行ったが、『安倍首相の了承があれば支援を検討する』と言われ、岸田さんは驚いた。安倍首相の考えが変わったとは思ってなかったんだろう」

(本誌・西岡千史、上田耕司/今西憲之)

※週刊朝日9月18日号より抜粋

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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