患者団体「筋痛性脳脊髄炎の会」は、日本でコロナ後遺症に悩む人にアンケートを実施した。自身もMEで、30年にわたる闘病生活を続けている同会の篠原三恵子理事長は、こう話す。

「コロナ後遺症でMEに似た症状が出ている人は、軽症の人も多い。アンケートはすでに約270人から回答を得ていますが、年齢も10歳未満から60代以上まで幅広い。『コロナは若い人は安心』というわけではありません」

 MEの症状を持つ人は、周りから「なまけているだけ」と誤解されやすい。ただ実際、MEの人のうち約3割は歩くこともできず、寝たきりの生活を続けている。動けないことに絶望し、自殺する人も絶えない。山村医師は言う。

「MEは、からだから排出されていないウイルスに対して、自分自身の免疫が過剰に反応して症状を引き起こしている可能性が指摘されています。一度、免疫の反応にスイッチが入ると、ウイルスが排除されても、スイッチが入りっぱなしになる。そのため、海外では免疫を抑制する治療薬『リツキシマブ』が症状改善に効果があったとの報告もあります」

 日本でもコロナ後遺症に関する訴えが増えているため、政府は実態調査を始めることにした。調査の一部を委託された、日本呼吸器学会理事長の横山彰仁医師は話す。

「コロナ後遺症は、症状の重い人から軽い人までいて、調査も幅広く実施する必要があります。どの症状が、どういった人に発生するかわからないからです。たとえば、海外では脱毛の報告も出ていますが、日本人には少ないようです。実態を把握するためにも、コロナに感染した人は調査に積極的に協力してほしい」

 前出の篠原さんも、早期の調査を求めている。

「新型コロナ後にMEを発症するメカニズムの研究は、治療法の開発にもつながります。国は、一日も早く研究班を設立し、治療法を確立してほしい」

 コロナ後遺症の大量発生は、国の財政に悪影響を与えるとの指摘もある。ある医師は警告する。

「MEで寝たきりになると、1人あたり数億円の医療・介護費が必要になる。コロナ後遺症を放置すれば、患者が苦しむだけではなく、日本の医療・介護財政を圧迫する」

 今後、後遺症に悩む人が増えるのは確実だ。一刻も早い実態解明と治療法の確立が求められる。(本誌・西岡千史)

週刊朝日  2020年9月18日号