帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「心配するということ」について。

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【天命】ポイント
(1)あれこれ心配してしまうのは人間の本性
(2)心配性になるのには九つの理由が
(3)何事も天命と考えれば心配性も楽になる

 コロナ騒ぎが起きてわかったことがあります。世の中にはコロナのことを、とても心配する人たちと、あまり心配しない人たちがいるのです。この差は意外に大きくて、お互いの意見はかみ合わないことが多いのです。

 例えば、仮の数字ですが、コロナの感染がわかった人の8割は無症状か軽症で、悪化する人は2割だと聞いたときに、心配する人は2割も悪くなってしまうと感じ、心配しない人は8割まで大丈夫なんだと感じるのです。私は、コロナについては心配しない方なのですが、いろいろと心配してしまう心配性の人たちの気持ちもわからないわけではありません。ちょっとしたことを、あれこれ心配してしまうのは人間の本性というべきで、決して悪いことではないのです。

 先日、大先輩の精神科医、斎藤茂太先生の『心配ぐせをなおせばすべてが思いどおりになる』(ゴマブックス)という本を見つけました。斎藤先生も、「心配する」という行動は裏を返せば、「幸せになりたい」「平穏な暮らしを楽しみたい」「トラブルやアクシデントを乗り越えて成功したい」といった前向きな気持ちの表れでもあると、この本に書いています。

 斎藤先生によると、パナソニック(現社名)を創業し、「経営の神様」と言われた松下幸之助氏も心配性だったそうです。創業当時、初めて採用した従業員が本当に出勤してくるのかどうか心配で、工場の前で立って待っていたというのですから、相当ですね。

「社長というのは、『問題だらけの会社だ。直さにゃいかん』と心配し、その心配と戦いながら、会社を立派にしていく。社長こそ、心配するのが仕事だ」と考えていたというのです。心配性を自分の仕事にしてしまうのですから大したものです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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