とはいえ、間のシナリオもないまま二人の再会の感情を表現するには限界があったようだ。「最後の場面の撮影を、その前の部分の状況をよくわからないで撮ったので、想像しながら、最大限幸せそうに表現しましたが、その後、ジョンヒョクとセリの度重なる別れの感情が積もり、結局再撮影しました」と明かした。スイスの場面だが、再撮影の部分は背景をCGで代替したそうだ。スイスでの短い逢瀬がいかに二人にとって尊い時間なのか、それがひしひしと伝わってくるあの表情は、やはり長い期間の撮影を通して生まれた表情だった。

 海外はスイスのほか、モンゴルでも撮影した。その他、実際に北朝鮮では撮れないため、それらしい場所を求めて韓国各地で撮影が行われた。国内外の撮影地の中で最も好きな場所を問うと、「済州島でセリが逃げるシーン、済州島がとっても美しかったです」と答えた。済州島では、DMZ(非武装地帯)の場面が撮影された。セリが不時着した場所だ。人手の入っていない、密林のような場所を探したところ、済州島で見つかったという。

 社会現象と言われるほど日本で大ヒット中の「愛の不時着」だが、新型コロナウイルス感染症の影響で、ファンと直に会うのは難しい状況だ。「一日も早くコロナを克服し、健康な姿でお会いできますように」と、ファンへのメッセージを語った。オンライン上では近くファンミーティングを予定しているという。

 2000年代初めから映画、ドラマの主演を務め、数々のヒットを飛ばしてきたが、まだまだ、セリのようにパワフルに走り続ける予定だ。「今年も来年も、変わらず、いい作品で皆さんにお会いするつもりです」と語った。(成川彩)

週刊朝日  2020年8月28日号