ソン・イェジンについて、演出のイ・ジョンヒョ氏は「一つのシーンでもいくつかを演じ分けてくれて、演出に選択肢をくれる俳優」と話していた。セリとの絡みの多かった北朝鮮の軍人ピョ・チス役を演じたヤン・ギョンウォンは「準備を徹底してくる俳優で、アイデアも豊富」と評した。

 本人は「正解を決めずに演技する方」だと言う。「準備していったキャラクターの表現を、現場で共演俳優や監督とリハーサルするなかで、より良いもの、違った表現にしてみようとしました。私の感じ方やアイデアをよく話す方」と言い、ドラマ作りに積極的に参加する姿勢がうかがえた。

 相手役、ジョンヒョクを演じたヒョンビンとは、映画「ザ・ネゴシエーション」(2018年)に続く、2度目の共演。「『ザ・ネゴシエーション』での共演は短くて惜しいと思うほど、短いなかでもいい感じの残る俳優でした」と振り返る。二人は何度か熱愛説も出ているが、そのたびに否定している。イ・ジョンヒョ氏は「付き合っているのかどうかは知らない」としつつ、「演出の私にとっては二人の息が合ってやりやすかった」と話していた。少なくとも演技の相性が抜群なのは間違いない。

 ソン・イェジンは「おもしろい台本で再び共演できることになってとても期待していました」と言い、期待通りだったようだ。ドラマの撮影をしながら「ジョンヒョクという人物とヒョンビンさんがぴったり重なって、おかげで役に入りこんで撮影することができました」と言う。

 ドラマの中でも、実はセリが北朝鮮に不時着する以前に、二人は出会っていた。その出会いの場所はスイス。ドラマが展開するなかで、その運命的な出会いが何度か登場する。さらに再びセリが韓国、ジョンヒョクが北朝鮮に戻った後、再会する場所もスイスだった。

 しかし、スイスの場面はまとめて一度に撮ったため、見ず知らずの他人だった出会いの場面と、様々な困難を乗り越えてきた後の再会の場面を短期間で撮影せざるを得なかった。これについてはベテランのソン・イェジンも「とても負担に感じた」と言う。「美しいスイスの風景を見せつつ、セリのつらい過去を表現したり、(セリ、ジョンヒョク、ソ・ダンの)3人の運命のような短い出会いも描かねばならず、最大限集中して撮影に挑みました。それらすべてを定められた時間内に撮り終えねばならず、大変でした」。それも、やはり過ぎてみれば「すべて思い出」だ。

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