日本の人口に当てはめると、60歳以上は約4300万人おり、うち約4千万人の手指の関節に変形があることになる。

「もちろん、この人たちが全員、治療が必要というわけではありません。実際に痛みなどで日常生活に支障が出て、治療が必要なのは、このなかの約4割です」(平瀬医師)

 さて、この指の関節痛や変形で最近、わかってきたことがある。それは、“妊娠・授乳中の女性と、更年期以降の女性に発症しやすい”という点だ。

 この時期は、女性ホルモンの一つであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が大きく変わる。この変動が、指の変形に大きく影響を及ぼす。事実、指の問題で同院を受診する患者の9割が女性で、そのうち9割が更年期以降だ。

「エストロゲンというと、女性の月経や妊娠などに関係するホルモンという印象がありますが、実はそれだけでなく、関節周囲や腱(けん)の腫れを抑えるという働きも持っています。日々、指を動かしていることで生じる関節の腫れを、エストロゲンが元に戻してくれているのです」(同)

 ところが、更年期などでエストロゲンの分泌が変わると、この関節への作用が滞ってしまう。結果、痛みや腫れ、変形というかたちで症状が表れてくる。

 見方を変えると、このエストロゲンこそ、指関節のさまざまな問題を解決してくれるカギといえる。平瀬医師が注目したのは、「エクオール」という成分だ。

「納豆など大豆製品に含まれる大豆イソフラボンが、腸内細菌で代謝されてできる自然の成分で、エストロゲンと構造が非常に似ているのが特徴です。エクオールが体の中でエストロゲンの代わりに働いてくれることで、関節の痛みや変形の進行が抑えられることがわかっています」(同)

 エクオールは私たちの体内でつくることができるが、必要な量を保つためには、納豆2パック、豆乳200cc、豆腐3分の2丁のどれかを、毎日食べる必要がある。また、そもそも体質などでできにくい人もいて、これは、市販の検査キットで調べることが可能だ。

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