出演者の堺雅人(左)と北大路欣也 (c)朝日新聞社
出演者の堺雅人(左)と北大路欣也 (c)朝日新聞社
香川照之 (c)朝日新聞社
香川照之 (c)朝日新聞社

 高視聴率を稼ぎ続けるTBS系ドラマ「半沢直樹」。大手都市銀行を舞台に、登場人物の顔芸なども話題で、見る人を飽きさせない。ドラマの代名詞となった「倍返し」「土下座」……。実際の現場はどうなのか? 本誌はAさん(本社運用部門。50代)、Bさん(副支店長。50代)、Cさん(大手行の中枢ポストなどを経て新興銀行。50代)、Dさん(大手行の中枢ポストなどを経て取引先に転職。50代)の4人に、“リアル”な行員の姿を語ってもらった(新型コロナ感染拡大を防ぐため個別に取材し、編集部で構成しました)。

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A:ドラマは毎週見ている。行内でも感想を言い合うなど話題だが、20代の若手はあまり興味がないようだ。ドラマで描かれているようなことを体験していないと、ピンとこないのかもしれない。脚色している部分も多いので、あくまでエンターテインメント作品として楽しんでいます。

C:昭和入行組や平成前半に入行した人から見れば、ドラマは「なるほど」と感じることが多いのではないか。今の世代ではわからない。

B:今のメガバンクの20代後半は大量採用で、離職者や転職者も多いです。“銀行逆風”のなか、若い行員のモチベーションの維持が難しい。すみません、いきなり愚痴になっちゃいました。ドラマについては、お客さんがよく話をふってきますが、「現実は違いますよ」と言っている。

D:行内の悪事を部下に押し付けてしまうことは全くないとは言えない。業績が危ない会社と散々癒着して接待を受けた支店長の転勤後、後を継いだ支店長が、その会社の破綻(はたん)によって罰点をつけられた。社内的なミスや責任を部下になすりつけることはありますよ。さすがに融資の焦げ付きなどは、部下にはなすりつけられないですけど。

B:ドラマのような姑息(こそく)なヤツは支店にはいない。ただ本社にはいるかも。できないことを、さもロジカルに言うような人はいる。かつては支店長の経費流用などはあったが、いまや支店長はこうした問題を監視したり、検証したりする立場。かりに支店長が不正を働いていたら、それは指摘しにくい。支店長がやったら我々も一蓮托生(いちれんたくしょう)となる。

C:頭取はじめ役員出席の経営会議でプレゼンして、案件がひっくり返ることは普通はない。今のメガバンクでは案件が多いので、報告や決裁だけだろう。頭取も事前に資料は見ている。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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