そもそもなぜ、ハチミツに農薬が混入したのか。

 NZの輸出品の中でも人気の高いマヌカハニーが注目されたが、NZ政府の報告書を読んだ玉川大学農学部教授で、ミツバチ科学研究センターで中村純氏によれば、検出率が一番高いのは、クローバーハチミツ、次にいろいろな花の蜜を集めた百花蜜。そしてマヌカハニーは3番目であった。

「クローバーなど牧草系のハチミツで高頻度に検出されています。牧草栽培ではその年の種子を散布する前に、除草剤で前作以降の雑草を枯らせます。ただ、除草剤をまいても1週間程度は花が咲き続ける可能性はあります。その期間に、ミツバチが花の蜜を集めるかたちでグリホサートが混入したのでしょう」(中村氏)

 グリホサートは、人体への影響について、見解が分かれる農薬だ。

 世界保健機関(WHO)の専門組織、国際がん研究機関は15年に、「ヒトに対して恐らく発がん性がある」と指摘。豪州や米ニューヨーク州では、昨年から今年にかけて使用禁止の法案を可決。米国や豪州、EU各国では自治体や企業が独自に使用を禁止するなど、世界的に規制の動きは広がっている。

 一方、欧州食品安全機関は発がん性を否定。日本の食品安全委員会も「ヒトの健康に悪影響を生じるおそれはない」として規制強化に向けた動きはない。

 中村氏は、NZで検出されたグリホサートについて、「NZ政府の報告書には、毎日230キロのハチミツを摂取しなければ人体への影響が表れないと書かれていました。残留量自体は、低濃度で基準値以下です」と、健康被害につながる可能性はないとした上でこう説明する。

 ミツバチの集めた蜜が濃縮されて出来あがるハチミツの場合、どうしても「残留濃度」は高くなる。

「食品の分析機器の精度が上がったこともあり、ハチミツからは除草剤や殺虫剤、殺菌剤など環境中で使われる、ごく微量の薬品が見つかります。特に除草剤や殺菌剤はミツバチには短期的な毒性を示さないので巣に持ち込まれやすい。微量ですがハチミツから検出されやすいのです。今回のNZの件は、それほど驚くニュースではありませんでした」(中村氏)

 ハチミツの農薬汚染に危機感を抱き、対策をしている日本企業もある。大手の山田養蜂場の担当者は、対策は万全だと説明する。

「蜜蜂の採蜜範囲は2キロ程度です。NZでハチミツから農薬が検出されたケースは、農薬を使用する農場や牧場の近くに巣箱を置いていたことが原因と指摘されています。もともと弊社が提携する国内外の養蜂場は、農場や牧場から3キロ以上離れた山奥で採蜜しています。農薬が混入することは考えにくい環境です。さらに、原料ロットごとに、300項目以上の農薬・抗生物質の検査を実施しています」

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国会議員ら「体内残留農薬」問題視]