実は、米国が成長し、英国を追い抜いた理由の一つが教育だった。私はアジアの教育事情については詳しく語ることができるが、日本の成長も、すばらしい教育制度と、社会に出てからの厳しいキャリア形成のおかげだったと考えている。

 中国も同じだ。中国には質の高い教育を受けた人々がいる。そして、すでに中国では、米国の10倍以上のエンジニアが生まれている。今後、この人たちが中国の技術力を底上げし、米国を追い抜く原動力になるだろう。

 話を元に戻そう。アジアの教育のレベルが高いのはたしかだが、それでも、22歳の若者は世の中のことについて何も知らない。しかも、この年頃は恋に落ちやすい。だから、若い時の結婚は良いことではないのだ。

 若い時は感情の制御が難しい。理由を説明できない行動もしてしまう。

 投資家も同じだ。若い投資家は、自信が持てないのに、感情に流されて損をする確率の高い投資をしてしまうことがある。年を取れば、私のように慎重になる。

 結婚についてのアドバイスはこれにつきる。「慎重になれ」ということだ。

 だから私は、娘たちには「28歳まで結婚してはいけない」と話している。その前に結婚するようなことがあれば、「2階に閉じ込めるよ」と宣言している。

(取材/朝日新聞シンガポール支局長・西村宏治、構成/本誌・西岡千史、監修/小里博栄)

週刊朝日  2020年9月11日号

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ジム・ロジャーズ

ジム・ロジャーズ

ジム・ロジャーズ/1942年、米国アラバマ州出身の世界的投資家。ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並び「世界3大投資家」と称される。2007年に「アジアの世紀」の到来を予測して家族でシンガポールに移住。現在も投資活動および啓蒙活動をおこなう

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