室井佑月・作家
室井佑月・作家
イラスト/小田原ドラゴン
イラスト/小田原ドラゴン

 作家・室井佑月氏は、貨物船「わかしお」の座礁事故の対応について、消極的な姿勢が続く日本政府に苦言を呈する。

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 インド洋の島国モーリシャス沖で貨物船「わかしお」が座礁事故を起こし、8月6日に1千トン以上の燃料油が流出した。元どおりのきれいな海に戻すには少なくとも20年はかかる、といわれている。

 こういうときにこそ小泉進次郎環境相はモーリシャスへ飛んで、世界へ向けて得意のパフォーマンスをすべきだと思うが、なにをしているのか?

 終戦の日の15日、小泉環境相は靖国神社を参拝していた。

 参拝から環境省へ戻った小泉環境相は待ち受けていた記者から、座礁事故について聞かれ、

「生物多様性の損失につながる重大な危機と受け止めている」「当事者である日本企業はもとより、環境省としてもひとごとでなく、傍観してはならないと考えている」

 と述べたらしい。

 靖国神社は、旧日本軍の戦犯者をも英霊と称して祀(まつ)っている神社だ。この神社を政治家が参拝することは、海外からも厳しい目が向けられている。

 こういうところへはホイホイ出かける。それは歴史を修正し、日本はすごい、そんなことばかりいっている一部の自民党応援団のハートをがっしりつかまえておきたいからだろう。解散総選挙が早まるなどという噂(うわさ)もあるし。つまり、自分のためのパフォーマンスだ。

 対するモーリシャスへの態度は、日本の環境相としてのもの。

 報道によれば、賠償金は船をチャーターしていた商船三井ではなく、船主の長鋪(ながしき)汽船や、同社が契約する保険組合が支払うことになるらしい。だが、それであったとしても、この事故に対し、加害者側となる日本はもっと誠意を見せるべきだろう。

 海外メディアはさかんに環境危機について報じ、旧宗主国フランスのマクロン大統領は、

「フランスはモーリシャスの人々と共にある」

 と表明もした。

 しかし、安倍首相も、小泉環境相も、日本のメディアもまるでひとごと。傍観そのものだ。

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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