石破茂元幹事長(C)朝日新聞社
石破茂元幹事長(C)朝日新聞社

 有力候補たちは、早くも首相の座を射止めるための活動を開始。石破茂元幹事長も出馬の意向を示している。国民からの人気も高く、報道各社の世論調査でも常に「ポスト安倍」の筆頭として名前が挙がるが、目下のところ“逆風”に見舞われている。

【一覧】ひと目でわかる自民党の派閥勢力図

 石破派は19人で菅グループより少なく、安倍晋三首相は「石破氏だけには政権を譲りたくないと考えている」(細田派議員)ことから、頼みの綱は約100万人の党員票だった。

 しかし、今回の総裁選は党員投票を行わず、国会議員394票、全国の都道府県連141票の合計で決定する両院議員総会で総裁選を実施することが9月1日の総務会で決まってしまった。党員投票なしの総裁選については、小泉進次郎環境相が「過程を国民にも共有することが信頼回復につながる」と批判。こうした声が高まれば情勢がひっくり返る可能性も考えられたが、決定を一任された二階俊博幹事長は「党員投票なし」で押し切ったかたちだ。

 石破氏の最大の誤算は、「頼みの綱」の二階氏の支持を確保できなかったことだ。

 二階氏は6月、石破氏から9月にある石破氏の政治資金パーティーでの講演を依頼されると、これを快諾。2人が接近する動きに永田町がざわついた経緯がある。8月28日の安倍首相の電撃辞任直後、ある自民党幹部はこう語っていた。

「今は二階さんが表立って支援する気配はないが、石破さんが『幹事長は引き続き二階さん』と言えばわからないね。あるいは、石破氏と二階氏の古巣である竹下派の竹下亘会長や、青木幹雄元参院議員会長あたりが二階さんと話をつけるとか。竹下派も長く、総裁が出ていないからね」

 ある派閥の領袖も本誌の取材に「うちは石破を推す」と胸中を明かしていた。

 ところが、菅義偉官房長官の「電光石火」の動きによって、石破氏は大きく先行を許してしまった。それまで出馬の意向を示してこなかった菅氏は8月29日、いち早く二階氏と会談。麻生派を率いる麻生太郎財務相兼副総理、細田派の細田博之会長とも立て続けに会談し、31日には二階派、麻生派、細田派という3派閥が菅氏を推す流れがつくりあげられたのだ。

著者プロフィールを見る
上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

上田耕司の記事一覧はこちら
著者プロフィールを見る
今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

今西憲之の記事一覧はこちら
次のページ
菅氏の仕掛けに、河野防衛相も出馬断念