総裁選序盤戦で優位に立った菅官房長官(c)朝日新聞社
総裁選序盤戦で優位に立った菅官房長官(c)朝日新聞社
自民党の派閥勢力 (週刊朝日2020年9月11日号より)
自民党の派閥勢力 (週刊朝日2020年9月11日号より)

 電撃的だった安倍首相の辞任から4日。9月1日に開かれた自民党の総務会では、党員投票を行わない両院議員総会方式で総裁選が行われることが決定し、「ポスト安倍」は事実上、各派閥の有力者たちが“密室”で決めるスタイルとなりそうだ。

【一覧】ひと目でわかる自民党の派閥勢力図

当初から「ポスト安倍」候補と言われていた岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長の両者を抑えて目下のところ最有力とされるのは、菅義偉官房長官。党内最大派閥である細田派をはじめ、麻生派、二階派といった有力派閥の支援をいち早く集めたが、当初、安倍首相の電撃辞任は「想定外」だったという見方がある。

「ポスト安倍」候補として菅氏の存在感が一気に増したのは、7月に安倍首相の体調不良説が流れるようになってから。菅氏が新型コロナ対策の司令塔として前面に出て、「Go To トラベル」キャンペーンなどを主導。メディアの取材にも積極的に応じた。官邸関係者がこう語る。

「もともと、安倍さんは岸田さんに政権を禅譲する構想だったが、岸田さんはコロナ対策で『給付金30万円』のプランを実現できなかったことなどで力不足が露呈し、失速。非常時ということもあり、安定感がある菅さんを推す声が強まった」

 こうした流れを考えると、菅氏が最有力候補に躍り出る現在の流れはしごく自然に思えてくる。ただ、事はそう単純ではないという。

「待望論の高まりは、周辺がマスコミに情報を流してムードをつくろうとしている面もある。派閥がない菅さんが総裁選に勝つのはそう簡単ではない」(官邸関係者)

 実際、今回の安倍首相の電撃辞任は、菅氏にとって「想定外」だったという見方がある。28日の会見に参加した記者の一人がこう話す。

「安倍さんの表情は思ったより良かったのに、菅さんの顔色が悪いのが目立っていた。『体調が悪いのかな』と心配する記者がいるくらいでした」

 菅氏はこれまで一貫して、安倍首相の辞任説を否定。辞任の一報が流れる直前の会見でも安倍首相の健康状態について「毎日お目にかかっているが変わりない」と断言していた。それが、同日午前の閣議後、安倍首相が麻生太郎財務相との会談で初めて辞意を明らかにすると、状況が一変した。自民党議員は言う。

「党幹部でも、安倍さんの辞意を知ったのは麻生さんとの会談が終わった後。菅さんも第一報のニュースが出る直前まで知らなかったはずです」

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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電撃辞任後、すぐに動いた菅氏