さらに、「トランプ氏が選挙に敗れれば、安倍首相の辞任よりも市場には大きなインパクト。大統領の交代、コロナの感染再拡大、さらに黒田総裁の辞任など、悪材料が重なれば、最悪の場合、日経平均株価は年末までに2万円割れとなる可能性もあります」(前出の斎藤さん)。

 ドル円市場にも影響が及びかねない。

 三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチの内田稔チーフアナリストは、次のように言う。

「辞任表明が“サプライズ”となった面はありますが、日米の金利差は縮小しており、もともと円高圧力は高かった。年末にかけて1ドル=103~105円程度へ、円高が進むとみています。政府と日銀はデフレ脱却に向けて連携しており、政策の連続性は途切れないと考えていますが、次期首相や黒田総裁の動きしだいで、金融政策の連続性に疑念が生じた場合には、同100円を割り込む恐れもあります」

 金融市場が円高・株安へと一気に進めば、日本経済へのダメージは大きい。新型コロナの収束が見通せないなか、各地で悲鳴をあげている“コロナ不況”に拍車がかかりかねない。(本誌・池田正史、浅井秀樹)

週刊朝日  2020年9月11日号

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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