完全復活した錦織選手が見られるのは次の全仏かもしれない。プロの鈴木貴男選手は、期待を寄せる。

「クレーコートでの復活となってしまいますが、錦織選手はクレーでの実績がある選手。しっかり準備をすれば十分上位に行ける実力を持っているので、期待はできます。ただ、隔離された生活から戻り、練習も再開されたばかり。大会までにどういう感じで試合に取り組めるのか、何試合ぐらいこなせるかが重要。また、欧州に行ってもコロナ感染への注意も払わなければなりません」

 日本テニス協会専務理事で、日本オリンピック委員会専務理事の福井烈さんは、こう話す。

「錦織選手の欠場は残念なことではありますが、けがからの復活、コロナウイルスからの復活という彼の置かれた状況を知ることによって、テニスをプレーする以上のインパクトが多くの人に与えられていると思います。どんな大会でプレーするのかではなく、どんな錦織選手で帰ってきてくれるのかが大切です。万全の準備をして、またワクワクするテニスを見せてくれることを楽しみにしています」

 一方、女子はどうだろうか。

 世界ランク1位のアシュリー・バーティ(豪州)が欠場を発表している。

 注目の大坂なおみ選手(日清食品)は、全米OPの前哨戦と位置づけられている大会で、準決勝を勝ち、決勝に臨むはずだったが、左太ももの裏のけがで棄権した。

 とはいえ、それまでの試合については、前出の沢松さんは好調と見ている。

「男女通してすべてのツアー選手の中でおそらく5本の指に入るほどの試合勘の取り戻し方の早さだと思います。正直驚きました。優勝という二文字にかなり近い選手であることは間違えない仕上がりでした」

 杉山さんは、鍵は「リカバリー」だと話す。

「前哨戦の4試合の素晴らしいパフォーマンスからこの半年間をすごく上手に使って過ごしてきたことがうかがえました。久しぶりの連続の試合で肉体的な疲労もあったと思いますが、短い間でのリカバリーがうまく調整できれば、全米OPにも上位が期待されるパフォーマンスを見せてくれるのではないでしょうか」

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無観客試合の影響は?