──キャサリンさんを演じ、何を感じましたか?

「第三者の視点からみれば、内部告発は真実を伝えると同時に法律を破るという二律背反の状態にある。法律を破れば罰せられるのは当然だし、法を守ることが民主主義の基本だから。つまり政府に従わなければならないということ。本当に興味の尽きないテーマだと思う。国民のために真実を伝えるのがベターなのか、それとも国民を守るために真実を隠すべきなのか、私もわからない。だからこそ、このような映画が興味深いわけ。物事の白黒がつけがたいという点で」

──自分が彼女の立場に立たされたらどうしたと思いますか?

「誰もが彼女のようにふるまったと思いたい。でも自分の生活を守るための選択をしたかもしれない。人は真実を語る人を賛美しようとしない。真実を語った人たちは、とても苦労している。子供には真実の貴重さを教えるのに、現実の社会ではその理屈は通らない。複雑な問題よ」

(取材・文/高野裕子)

週刊朝日  2020年9月4日号