競輪でビギナーズラックも最後は…? 作家・黒川博行、白川道との思い出 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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競輪でビギナーズラックも最後は…? 作家・黒川博行、白川道との思い出

連載「出たとこ勝負」

黒川博行週刊朝日#黒川博行
黒川博行・作家 (c)朝日新聞社

黒川博行・作家 (c)朝日新聞社

※写真はイメージです (GettyImages)

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 平然としてトオちゃんはいったが、国産高級車なら三台は買えるほどの金額だった。その負けっぷりなら貴賓室は当然だ。

「まず、競輪の基本からレクチャーしよう」

 トオちゃんは選手の脚質とかライン、位置どりなどを懇切丁寧に解説してくれたが、スポンジ頭のわたしにはさっぱり分からない。「このラインはAが先行してBがついていく。Cはこう動くからDはこう来る」

 根が素直なわたしはトオちゃんの予想どおりに車券を買った。どうせ、そんなものは当たるわけがない。

 そうしてはじまった第五レース。不思議なことにトオちゃんの予言どおりにラインができる。

 ジャンが鳴り、最後尾につけていた選手がまくりに入った。先行グループをごぼう抜きにしてゴールを走り抜ける。まさにビギナーズラック。生まれてはじめて買った車券が的中した。

「トオちゃん、すごいやんか。めちゃかっこええわ」外れたらぼろくそにいうはずが、「ね、次のレースも教えて」

 わたしはご機嫌で車券を買いつづけたが、あとはまったくの鳴かず飛ばずだった。

 最終成績は、トオちゃんが70××、イオリンが10××の負け。わたしはイーブンだった。トオちゃんは負けを取りもどすべく、みんなを赤坂の雀荘に誘い込み、その結果はわたしのひとり勝ちに終わったから、競輪とわたしは相性がよかったのかもしれない。

黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する

週刊朝日  2020年9月4日号


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黒川博行

黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する

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