ねぷたをつくる会場を分散し、密にならないように配慮。ねぷたの大きさは例年の半分ほどにして運行した。「町内からは拍手もあったし、おひねりもちょうだいしました。私たちにとって、ねぷたがないと『夏が来た』とならない。DNAに刻み込まれているんです。やめるのは簡単。どこまでできるのか模索して挑戦しないといけない。今回の取り組みは来年にもつながると思っています」(大中さん)

 愛知県一宮市は、ドリンク代のみでトーストやゆで卵などが付く「モーニング」発祥の地。市はモーニング文化を守るため、自主休業した喫茶店に10万円を支給するなどした。一宮モーニング協議会も、コロナ対策としてテイクアウトでの販売を強化する。モーニング提供店を紹介する地図に掲載された94店のうち、18店がテイクアウト可能となった。

「喫茶店に毎日通う人も多い。行きつけの『マイ喫茶店』を二つも三つも持っている人もいます。私たちにとってモーニングは“空気”。なくては生きていけないものです。売り上げを伸ばす攻めの戦略として、テイクアウトを広めていきたい」。協議会の森隆彦会長は語る。お値打ちなモーニングサービスが根付き、自宅のように長時間くつろげる空間として親しまれた愛知の喫茶店文化も、コロナで進化を遂げつつある。

 香川県は、なんと言ってもうどんだ。売り上げが激減するうどん店を助けようと、「讃岐うどんを絶対守る会」が立ち上がった。「お母さんの弁当よりもうどんが好き」とされるほどの県。インターネットで1枚500円のうどん券を販売。券は2022年3月末まで使用できる。4月から売り始め、およそ1千万円売れたという。

 コロナと向き合う生活がしばらくは続くだろう。それだけに、県民の意識にマッチした各地の対策が奏功することを切に願う。

(本誌・吉崎洋夫、松岡かすみ、岩下明日香、松岡瑛理)

週刊朝日  2020年8月28日号より抜粋

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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