ミッツ・マングローブ「エキセントリック・ミコの絶対的存在感。」 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

ミッツ・マングローブ「エキセントリック・ミコの絶対的存在感。」

連載「アイドルを性せ!」

このエントリーをはてなブックマークに追加
ミッツ・マングローブ週刊朝日#ミッツ・マングローブ
ミッツ・マングローブさん

ミッツ・マングローブさん

弘田三枝子さん(c)朝日新聞社

弘田三枝子さん(c)朝日新聞社

熱視線

ミッツ・マングローブ

amazonamazon.co.jp

 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、弘田三枝子さんを取り上げます。

【写真】ファッションやメイクにおいても先駆者だった弘田三枝子さん

*  *  *
 先日、ラジオの生放送20分前に飛び込んできた「ミコちゃん」こと弘田三枝子さんの訃報。ショックと寂しさに打ちひしがれながら、彼女の出世作でもある60年代アメリカンポップスのカバー『ヴァケーション』を急遽オンエアしました。今年は多くの人がバカンスらしいバカンスを過ごせない中、まるで「心だけでもヴァケーションを!」とミコちゃんに言ってもらった気がします。

 それにしてもNHKはおろか民放各局とも、ミコちゃんの訃報を大きく報じたところがほとんどなかったのには驚きました。いわゆる「芸能界的第一線」と呼ばれるようなポジションにはいなかったとは言え、間違いなく今日ある「日本のポップス」の礎を作った大功労者。単に「昭和のスターがまたひとりこの世を去った」と片付けてしまうには明らかに次元の異なる存在です。彼女の歌声と存在そのものが、後の音楽シーンを彩る歌手やミュージシャンにどれほど大きな影響を与えたことか。笠置シヅ子、美空ひばり、越路吹雪、ザ・ピーナッツ、ちあきなおみなどと共に、その名を歴史に連ねて然るべき稀代の女性ボーカリストであり元祖アイドルであったにもかかわらず、特に近年は世間一般における評価が真っ当ではなかったことにずっと歯がゆさを感じていました。しかしながら、「ミコちゃん」が生涯「ミコちゃん」であり得た理由は、図らずもそこにあったとも言えるわけで。

 2000年代以降、幸運にも仕事でご一緒させて頂く機会に恵まれた私。最初は「あの伝説の弘田三枝子が目の前にいる!」という感覚に陥ったものですが、数年前テレビで共演した際、その場にいた作家の岩下尚史さん(超の付く弘田三枝子狂)が「あれほどの大歌手でらっしゃるのに、弘田さんはいっさい尊大な空気をお出しにならない。もっと偉ぶってもよろしいのに」と言ったのを聞き、ハッとしました。確かに、作ったような謙虚さを盾にするベテラン大物スターは多いですが、それとは違う繊細で真っ直ぐな初々しさをいつも纏っていると言いましょうか。故に私のような若造も、つい「ミコちゃん」と呼びかけてしまえる可愛らしさに溢れる方でした。きっと「ザ・芸能界」的なポジション争いには興味がなく、純粋に歌とエンタメに情熱を注ぎ、聴衆が求める60・70年代を一手に担い、一方で実験的なサウンドにも国境を超えて果敢に挑み続けたミコちゃん。


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

続きを読む

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい