阪神との2軍戦でスイングする中日の根尾昂=7月5日(C)朝日新聞社
阪神との2軍戦でスイングする中日の根尾昂=7月5日(C)朝日新聞社

 中日・根尾昂の育成方針について、不安の声が上がっている。8月4日に今季初昇格したが、6試合で15打数1安打、打率6分7厘と結果を残せず、13日に出場選手登録を抹消された。

 数字だけを見れば2軍落ちも仕方ないと思えるが、同情の声が多い。地元・名古屋のテレビ関係者は、こう話す。

「なぜ根尾を1軍に上げたのか。首脳陣の考えが見えない。11日の広島戦(マツダ)で、プロ17打席目でプロ初安打をマークしました。プレッシャーもあったと思うし、これで精神的に楽な状態で試合に入れると思いましたが、翌日の試合で出場機会がなく、揚げ句の果てに2軍落ち。ここから勢いに乗る可能性があったのに……」

 2018年、大阪桐蔭高の甲子園春夏連覇に投打で貢献。同年秋のドラフト1位で4球団が競合した黄金ルーキーは、一歩ずつ成長している。昨季は2軍で108試合出場し、打率2割1分、2本塁打とプロの投手の速球、変化球のキレへの対応に苦しんだが、スイングスピードに力強さが増した今季は1軍昇格前に2軍で打率2割8分2厘、2本塁打とボールを捉える確実性が格段に上がった。

 ある中日OBは、こう憤慨する。

「根尾はまだ高卒2年目。個人的には今年もじっくり2軍で鍛えたほうが良いと思います。1軍で使うなら結果が出るまで我慢して使い続けること。あの坂本勇人巨人)だって1軍で出始めた高卒2年目は打てなくても原辰徳監督が辛抱強く使い続けました。今回の根尾みたいに1軍に上げて2週間足らずで下に落とす中途半端な形が一番良くない。だから中日は『高卒の若手が育たない』と言われるんですよ」

 中日は過去にも平田良介、堂上直倫、高橋周平ら高校球界屈指のスラッガーをドラフト1位で獲得してきた。だが、3選手とも1軍に定着するのに紆余(うよ)曲折を経た。もちろん、高卒の選手がプロの第一線で活躍するためには多くの時間を要する。平田、高橋が中距離打者として活路を見いだしたのは、打者としての特性や広いナゴヤドームを本拠地に置いている点を考慮しなければいけない。しかし、球団の育成方針もその選手の野球人生において大きなウェートを占める。1軍で大輪の花を咲かせるためには、首脳陣が失敗に目をつぶって我慢強く起用し続ける覚悟が必要だろう。根尾のファーム降格を決断した与田剛監督に、「ではなぜ1軍に上げたのか?」という疑問が起きるのは当然かもしれない。

 昨秋のドラフト1位で3球団が競合した和製大砲・石川昂弥ら、中日の高卒の若手たちは将来を嘱望される金の卵が多い。

「下位に低迷しているんだし、それなら数年先を見据えて3人を1軍で使い続けてほしい」

 という声が中日ファンから上がる。球団が彼らをどう育てるか。課せられた責任は重大だ。(牧忠則)

※週刊朝日オンライン限定記事