手拍子に変化をつける学校もあった。通常時であれば、チャンステーマとして有名な「ワッショイ」を演奏する天理は走者が二塁に進むと一、一、三(パン、パン、パンパンパン)のリズムで攻撃を後押しした。コロナ禍だからこその応援のひと工夫だった。

(3)人の気配が少ない球場内外の光景

 試合から離れると、球場内も当然通常とは違う。コンコースに並ぶ飲食店はすべて営業しておらず、例年であれば報道陣がよく利用する球場内の喫茶店「サロン蔦」にも入れない。いたるところに消毒液が配置されているほか、オーロラビジョンには回が終わるごとに、感染拡大防止のための対策を紹介するアナウンスが流れる。

 球場の外にも大きな変化があった。例年ならにぎわっている阪神電鉄甲子園駅周辺も乗降客は少なく、球場チケット窓口の長蛇の列もない。毎年、球場前には翌日の試合観戦に向けた“待機組”がレジャーシートなどを敷いて並んでいる光景が見られるが、今年はそんな熱心なファンたちの姿も見られない。こればかりは仕方ないものの、やはり、「例年とは違う夏」を実感させられる。

(4)取材も「ディスタンス」を意識

 試合後の取材方法もまた、様変わりした。まず、いつもは各社の報道陣が居並ぶバックネット裏の記者席は、今年はバックネット裏の他の観客席も使用して、各記者が「ディスタンス」をとって分散して座る形式に変わっている。

 試合後の取材は、例年は“お立ち台”にあがった監督と選手を多数の報道陣が取り囲んで話を聞き、そのほかの選手には控室で取材することになっているが、今年は「密」になるのを避けるため、コンコースに各選手が背番号の順で一定の距離を空けて並ぶ。

 選手と報道陣の間には柵が設けられ、選手も含めマスク着用での取材だ。柵を挟んで選手と距離があるうえに、口元も見えないことで、次の試合が控えているとサイレンの音などで選手の声が聞き取れないこともままある。また、いつもならば試合前の練習中にも設定されている取材時間もないため、限られた機会の中で話を聞き出さなければいけない。報道陣にも、例年以上の努力と工夫が求められている。

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試合に負けても例年より「笑顔」が多めな理由