甲子園で開催されている2020年甲子園高校野球交流試合(日本高校野球連盟主催、朝日新聞社、毎日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)は8月11日、2日目を迎えた。グラウンドの上では例年と変わらない熱戦が繰り広げられていても、甲子園を取り巻く環境は、やはりいつもとは全く違う。そこで、現場で取材してわかった、今年の甲子園の「例年と異なる5つのポイント」を紹介したい。
(1)選手の声がよく聞こえる
11日の第3試合では、明豊(大分)のエース・若杉晟汰が好投し、県岐阜商を相手に勝利をつかんだ。若杉は終盤、リリースの瞬間に「おっしゃあ!」とも「よいしょー!」とも聞こえるおたけびを上げて、打者めがけて球を投げ続けた。
記者が座っていたのはバックネット裏の中段付近だが、上段に移っても若杉のおたけびはハッキリと聞こえた。こんなことは、球場が満員の通常時には考えにくい。野球部員や保護者など以外は原則、無観客で行われている今回の試合ならではの光景だった。
他にも、ベンチから控え部員が掛ける声もはっきり聞こえる。
「盗塁するよ盗塁するよ!」
「後ろもいい打者そろってるよ!」
など、味方を鼓舞したり、相手チームにプレッシャーをかけるような“あおり文句”もさまざまだ。監督の次のような“檄”も聞こえてくる。
「よっしゃあ、よく見た!」
「もっと球を絞らんとダメだろうが!」
これは原則無観客の中だからこその特徴だ。
(2)大声を出せない中での、手拍子などでの応援の工夫
普段は各チームの地元から多数の応援が押し寄せるアルプススタンドもいつもと違う。入場できるのが野球部員や保護者など一部に限られているため人数が圧倒的に少なく、ブラスバンドや応援部によるパフォーマンスもない。それに加えて、感染拡大防止の観点から、声を出しての応援は控えるようになっているのだ。皆、マスクを着用して、グラウンドに祈るような視線を送る光景が当たり前になっている。
そんな厳しい条件下でも、スタンドからの応援には最大限の“工夫”がなされている。これまでの試合で目立ったのは二塁ランナーが出るなどチャンス時の手拍子。パン、パン、パンとリズムを合わせた手拍子はとてもシンプルではあるが、ひとたび始まると球場の雰囲気は一気に変わり、そのムードに後押しされるように適時打が生まれることもあった。