65歳から月額22万1504円(19年度モデル年金額)、年額266万円受け取れる人が、60歳で繰り上げを選択すると30%減額された月15万5053円、年186万円になる(22年4月からは月16万8343円、年202万円)。

 一方で65~75歳に繰り下げ受給を選択すると、ひと月あたり0.7%増額する。「繰り下げるほど増える額が違ってきます」と大江さんが言うように、70歳から受け取りの開始を選択すると、年金月額は31万4536円になる。年額にすると377万円になる。

 最も遅い75歳まで先延ばしすると、月額は40万7567円と、「65歳からスタート」と比べて84%増となる。

 91歳まで生きると、「60歳スタート」と比べて累計受取額は2千万円以上違ってくる。

「生涯受け取る額で比較しても差は歴然です。65歳から年金の受け取りを開始しますと、86歳で累計5852万円になります。仮に75歳まで延ばしたケースでは86歳で、65歳で受け取るケースを総額で上回り、91歳では8313万円にもなります」(同)

4.個人型確定拠出年金(個人型DC、イデコ)に加入しやすくなる

 公的年金に上乗せして、さらに年金を増やす私的年金、イデコも今回の改正でメリットがある。

「現在、イデコは60歳未満までしか加入できませんが、65歳未満まで加入が可能になります。また、企業型DCは70歳未満まで加入可能になるので、その分、年金を増やすことができます」(井戸さん)

 ただし、60歳以降も国民年金に加入できる人でないとイデコに加入できないので、注意が必要だ。

(ライター・村田くみ)

週刊朝日  2020年8月14日-21日合併号より抜粋