東尾修
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7月28日、ホーム初戦のマリナーズ戦に5番DHで出場した大谷翔平(Getty Images)
7月28日、ホーム初戦のマリナーズ戦に5番DHで出場した大谷翔平(Getty Images)

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、トミー・ジョン手術を受けて復帰した大谷翔平投手の二刀流復活を不安視する。

【写真】ホーム初戦のマリナーズ戦に5番DHで出場した大谷翔平

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 大リーグも開幕したが、エンゼルスの大谷翔平が少し心配だな。7月26日(日本時間27日)の開幕3戦目となったアスレチックス戦に先発したが、1死も取れず自己ワースト5失点で今季初黒星を喫した。

 最速は94.7マイル(約152キロ)だったという。映像で見たが、体全体に躍動感が出ていないなと感じたし、腕の振りもどこか「怖さ」があるように見えた。無意識のところで手術した右ひじをかばう動きが出ているのかもしれない。

 右ひじのじん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)を受けた投手が必ず通る道が、日によって状態が大きくぶれることだ。レッドソックス時代に手術した松坂大輔(現西武)はかつて「この日が良くても次の日はまったく違う状態になる。登板日の調整に入った時に初めてわかることが多い」と話していたことを思い出す。そして「投げていく中で、どんどんその状態のブレ幅がなくなっていく」とも話していた。

 大谷はたった3回の紅白戦登板で公式戦に臨んだ。今結果を求めるのは酷である。ただ、怖さはどこかで消さないといけない。

 その翌日、27日(日本時間28日)は打者として先発出場した。メジャーで登板翌日に野手で先発出場したのは初めてだという。試合に出すことで迷いを吹き飛ばそうとしたジョー・マドン監督の心遣いもあるのだろうが、結果は4打数無安打3三振。自分のタイミングで振ることはまったくできていなかった。

 過去に例のないトミー・ジョン手術からの二刀流復活劇。前例のないものなのだから、誰もアドバイスなんてしようもない。ただ、投手出身の私の目から見て、投手だけでも復活への道のりは大変なのに、打者としても高めていくことは果たして可能なのかと考えてしまう。

 右ひじの状態が打撃にどんな影響を及ぼすかも本人の感覚でしかないものだ。投打両方が負のスパイラルに陥った時に、エンゼルス首脳陣、そして大谷はどんな判断を下すのだろうか。シーズンは60試合しかない。どこまで大谷を二刀流で使い続けてくれるのか。チームの忍耐力も問われる。

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東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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