ジム・ロジャーズ・投資家
ジム・ロジャーズ・投資家
すべての行動は記録されてしまうのか(Getty Images)
すべての行動は記録されてしまうのか(Getty Images)

「世界3大投資家」の一人とされるジム・ロジャーズ氏の本誌連載「世界3大投資家 ジム・ロジャーズがズバリ予言 2020年、お金と世界はこう動く」。今回は、新型コロナで強まる監視社会について。

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 新型コロナウイルスによって、すでに世の中で起きていた出来事は、さらに加速していく。

 その一つが、人間の行動監視の強化だ。

 どこの国の政府も、国民を監視することが大好きだ。政府は、私たちを自らのコントロール下に置きたがる。監視カメラだけではなく、携帯電話を通じた位置情報、クレジットカードや電子マネーの使用履歴など、その情報量は近い将来にとてつもない量になる。

 たしかに、国民を監視すれば、犯罪者を早く逮捕できるだろう。ウイルスの感染防止に役立つかもしれない。だからといって、政府が国民を監視することはいいことなのか。答えは「No」である。

 監視社会を良いと考えるのは、政府の人間と、他人をコントロールしようと考えている人間だ。それ以外の大多数にとって、良いことはない。

 しかし、現実には監視はどんどん強化されている。現在、私はシンガポールに住んでいる。この国の人たちは、外に出かけた時、どこに行ったのかをまったく知られずに移動することはできない。

 監視する人たちは、いつ、どれほどの期間にわたってどこに滞在したかを知っている。例え話をするなら、誰にも知られることなく不倫することも不可能だ。タクシーに乗った時点で、あなたが通った場所はすべて把握されている。

 もちろん、私は監視されることは嫌いだ。私はバーに行くことが好きだが、そこでお酒を飲んで、転んで頭を打って家に帰ったことなんて誰にも知られたくない。しかし、彼らは近い将来に私のすべてを知ることになる。

 過去の歴史を見ても、人々は権力者からの監視に挑戦してきた。法律や制度の運用で過度な監視を抑えようともした。

 今の世界なら議会に行って「監視社会は世界に悪い影響を及ぼす」と訴えることはできるだろう。しかし、最終的には、警察が政治指導者のところへ行って、「これは素晴らしい技術です。道を歩いているすべての人々を監視することができます」と言う。そして、事実そのとおりなのだ。

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ジム・ロジャーズ

ジム・ロジャーズ

ジム・ロジャーズ/1942年、米国アラバマ州出身の世界的投資家。ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並び「世界3大投資家」と称される。2007年に「アジアの世紀」の到来を予測して家族でシンガポールに移住。現在も投資活動および啓蒙活動をおこなう

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