今季1号を放ち、同僚に祝福される大谷翔平=7月29日(GettyImages)
今季1号を放ち、同僚に祝福される大谷翔平=7月29日(GettyImages)

 大リーグ・エンゼルスの大谷翔平が投手としての試練を迎えている。8月2日(日本時間3日)、右ひじのトミー・ジョン手術から復帰後2度目の登板で1回2/3を投げて2失点で降板。無安打に抑えたが、二回に2者連続押し出し四球を含む5四球と制球を修正できなかった。直球は最速156キロを計測したものの、その後に異変も。二回の降板直前に140キロ前半と一気に減速。右腕の違和感を訴え、MRI検査を受けた。球団は3日(同4日)、右ひじ付近の屈筋回内筋損傷と診断されたことを発表し、マドン監督は4日(同5日)、今季中の投手復帰はないことを明らかにした。今季は打者に専念することになる。

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 大谷は手術からの復帰戦となった7月26日(同27日)のアスレチックス戦でも被安打3、3四球、5失点で1アウトも取れずに降板している。現地のテレビ関係者は、こう表情を曇らせる。

「トミー・ジョン手術を受けた後はマイナーリーグで調整登板を経て、メジャーのマウンドに復帰するのが一般的です。ダルビッシュ有、松坂大輔も手術後にマイナーで何試合も投げてから復帰している。ただ、今年は新型コロナウイルスの影響でマイナーリーグが中止になっています。大谷は紅白戦で3試合投げたのみ。まだまだトップパフォーマンスには程遠い状態だった。手術後なので慎重を期しても公式戦に入ると余計なところに力が入る。故障のリスクは当然あるので、今回の右腕の違和感は心配です」

 一方で、打撃は規格外の打球を飛ばしている。7月29日のマリナーズ戦で内角球低めのボール球をすくいあげて右中間に今季初アーチ。逆転3ランに、大リーグ公式ホームページも「どうやってこれを打った?」とうなるほどだった。翌30日の同戦でも159キロの直球を逆方向の左中間に運ぶ2試合連続3ラン。ノーステップで160キロ近い剛速球をスタンドにはじき返す打法は他の日本人選手には真似できないだろう。地元記者は、こう分析する。

「大谷が二刀流で活躍しているのは他の選手には成しえない大きな価値があるが、個人的には打者に専念してどれぐらい打つか興味がある。トミー・ジョン手術から万全の状態で戻ってくるなら1、2年かかるし、打者としての時間も犠牲にする必要がある。打者に専念すればシーズン40本塁打以上打つ可能性を十分に秘めている」

 今までも不可能を可能にしてきた大谷。二刀流として完全復活はなるだろうか。(牧忠則)

※週刊朝日オンライン限定記事