山本容疑者は勤務していた千葉救急救命センター時代、アメリカへ研修にも行っている。その時の様子を山本容疑者がリポートしたものが今もネット上に残っている。

<この経験を活かして広い視点で日本の医療を見つめ、日本の医療の発展に救急診療の現場から貢献していきたいと思います>と意欲的な感想を記している。

 アメリカの研修で白衣を着ている姿を撮影した写真を自身のED治療のSNSに使っている。どこからも、今回の犯行をうかがわせるような気配はない。

「当時、2人から安楽死などについての論議などはまったくありませんでした。それどころか、立派な医師として活躍しているんだなと思っていた。今回の事件を知って、ビックリするばかりです」(前出・医師)

 その後、大久保容疑者と山本容疑者のつながりは、『扱いに困った高齢者を「枯らす」技術:誰も教えなかった、病院での枯らし方』という共著を電子書籍で出版していることだった。事件発覚後、電子書籍は買えない状態となっているが、紹介文にはこう記されていた。

<「今すぐ死んでほしい」といわれる老人を、証拠を残さず、共犯者もいらず、スコップや大掛かりな設備もなしに消せる方法がある。医療に紛れて人を死なせることだ。病室に普通にあるものを使えば、急変とか病気の自然経過に見せかけて患者を死なせることができてしまう。違和感のない病死を演出できれば警察の出る幕はないし、臨場した検視官ですら犯罪かどうかを見抜けないこともある。荼毘に付されれば完全犯罪だ>

 安楽死を思わせるような内容が列挙されていた。 事件の数か月前、大久保容疑者は「安楽死研究会」という掲示板をネット上に開設。

<(安楽死が)バレないための方法、についてのアドバイス>などと記し、<嘱託殺人、自殺幇助など、法にダイレクトに触れることが書かれると運営に削除されるおそれがあります>と違法性に言及するような記述もあった。

 かつては医師として理想を追っていた2人がなぜ、こんな事件を起こしてしまったのだろうか?
(今西憲之)

※週刊朝日オンライン限定記事