「運動不足と熱中症は一見、関係なさそうに見えますが、実は深いつながりがあります。体内でおおかたの水分とミネラルを貯蔵している場所は、筋肉です。とくに大事なのは、太ももにある大腿四頭筋。ここが運動不足で痩せ細ってしまうと、水分やミネラルをためておけなくなるので、脱水しやすいのです」

 運動の機会が減り、筋肉が落ちていたとしたら、これもまた熱中症の要因になるというのだ。

 巣ごもりとは直接は関係がないものの、マスク着用にも注意が必要だと、三浦副院長は強調する。

「水分を取るためには、いちいちマスクを外さなければならないうえ、マスクで呼吸がこもるので、のどや口があまり乾かない。こうした理由で、水分摂取のタイミングが遅れてしまうことが考えられます」

 厚生労働省も「屋外で人と十分な距離(少なくとも2メートル以上)が確保できる場合には、マスクを外すように」と呼びかけている。

 では、巣ごもり熱中症を防ぐにはどうするか。

 熱中症対策に詳しい中京大学スポーツ科学部の松本孝朗教授は「コロナ禍においても、例年どおりの予防策をしっかりと」と話す。松本教授らがまとめた冊子「日常生活における熱中症予防」(日本生気象学会)などを参考にしたい。同学会のホームページ(※1)からダウンロードできる。

 そのうえで、本誌が紹介したい対策は次の五つだ。

(1)プラス2分手洗い
 感染対策として有効だとされる手洗いの際に、すすぎを「2分」多めに(手首までしっかりと)する。実はこれ、感染症と熱中症の“W対策”にもなると、三浦副院長は勧めている。

「手のひらはラジエーター(熱を放熱する装置)のような機能があるため、体にこもった熱を冷ますには、手のひらを冷やすのが最適。暑い日は1時間に1回程度、このような手洗いをするといいと思います」

(2)ペットボトル予防法
 外出時に冷えたペットボトルを手で持って歩くというもので、(1)のラジエーター機能を利用した対策だ。持ち歩いたペットボトルの水は、のどが渇いたときに飲む。冷却と脱水予防の一石二鳥となる対策だ。

次のページ