池上:日本は全く変わってなかったんだなということですよ、戦争中と。何かあると国防婦人会と同じような、五人組と同じ発想がやっぱり出てくるんだって思いましたけどね。ちょっと嫌な感じですけどね。

佐藤:法律で決めて休業させる場合には、補償しないといけない。そうじゃなくて、特攻隊に渡す恩賜のたばこみたいな形でね。恩恵的に国民に10万円を差し上げます。企業に貸付金を与えます。払えない時はチャラにしてもいいです。これは心が広いお父さんである安倍政権だからできるんだ。こういう形の一種のパターナリズム(父権主義)で問題を処理するほうが、コストが少ないと判断したんでしょうね。なんやかんや言って、お父さんに対する信頼感がこの国ではあるからなんです。

池上:それを麻生太郎財務相は「民度が高い」という彼流の言い方をしたわけですよね。欧米の民主主義者たちからすると、理解できないわけで。ロックダウン(都市封鎖)するわけでもなく、罰則もないのに感染を抑えることができて、死者も少ない日本は不思議だと思われています。

佐藤:結局、今回の新型コロナは各国の独自策で抑えていることになる。これほど国際協調をかなぐり捨てているのも珍しいですよね。

池上:今までの感染症の歴史で国際協力で抑えることができたのは天然痘ですね。東西冷戦時代に、アフリカにちょっとだけ残っているものを封じ込めようとして、米ソが協力して根絶することができたわけですよね。エボラ出血熱に関しても必死になってコンゴ民主共和国あたりに封じ込めているというのはありますけども、こういう急激に拡大してくる感染症を国際協調で止めた例はなかなかありませんね。

佐藤:かけ声だけはありますけど。自国でのワクチン開発が最優先でしょうね。国家機能の強化で他国は分けてくれないことがわかっていると思うんです。開発した国が自国民の接種を優先し、その後に同盟国、友好国に出すという順番になりますから。

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