国立競技場 (c)朝日新聞社
国立競技場 (c)朝日新聞社
東京五輪をめぐる延期決定後の主な動き (週刊朝日2020年7月31日号より)
東京五輪をめぐる延期決定後の主な動き (週刊朝日2020年7月31日号より)

 世界中で感染拡大が止まらない状況の中、そもそも1年後に東京五輪が無事開催できると思っている人は少ない。JNN(TBS系)が7月に実施した世論調査によると、大会開催について「できる」と答えた人はわずか17%。77%が「できない」と回答した。

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 組織委関係者は言う。

「結局は米国の感染拡大が止まらないと、開催できません。米国の選手団が東京に来ないと、IOCに入る米国の放映権料が減るからです。IOCは米国のテレビ局(NBC)を無視できません」

 そこで日本の大会関係者から案として浮上しているのが「4年延期論」。24年パリ大会を28年開催にし、24年に東京大会を実施するというものだ。だが、1924年大会以来の100周年開催を掲げるパリが同意するとは考えにくい。国際的な理解を得るのも難しい。

 日本維新の会の馬場伸幸幹事長はこう指摘する。

「3月30日の段階で、1年後の日程を発表したのが間違いでした。24年のパリ大会までの延期も想定すべきでしたが、大会スケジュールが固定化されてしまいました」

 前出の組織委関係者も、4年延期論に否定的だ。

「IOC委員の定員数は115人で、約4割がヨーロッパの国の人。米国のテレビ局も、東京より時差の少ないパリで開催してくれたほうがありがたい。本音では東京大会は早く中止にしたいと思っている人もいるくらいで、4年延期は不可能なんです」

 酷暑を避けるため東京五輪のマラソン、競歩を札幌開催に変更したように、IOCには開催都市の意向を無視できるほど強い権限がある。

 ここで再浮上しているのが、22年夏開催の「2年延期論」だ。組織委内には、こんな意見もある。

「米国の感染拡大が収まらないなら、もう1年延長すべきという意見は出てくる。2年後なら開催できる可能性は高い」

 IOCのバッハ会長は5月、英BBCのインタビューで、1年延期について安倍首相から説明されたとき、「最後のオプション(選択肢)」と言われたと発言。2年延期が難しい理由として、「組織委が3千人、5千人もの人を雇い続けることはできない」と述べた。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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