信州大特任准教授 山口真由(37) (本人提供)
信州大特任准教授 山口真由(37) (本人提供)
山口真由 (c)朝日新聞社
山口真由 (c)朝日新聞社

 コロナ禍で人々の価値観が変化している。結婚とは、家族とは……。アメリカの家族法が専門の信州大学特任准教授の山口真由さんに、結婚観や家族観について聞きました。

【写真】コメンテーターとしても活躍する山口真由さん

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 日本ではこの数十年、仕事を持ち、経済的にも独立する女性が増えました。以前なら結婚は「義務」に近かったと思いますが、私たちの世代では選択という感覚が強くなっていると思います。私も独身を不幸だとは感じていません。3月まで東大の大学院で家族法を学び、4月から現職に就任しました。研究を進める上でも一人きりの時間はとても大切だと感じます。

 ただ、子どもを持たない人生で良いのか、ということは、私自身、よく考えます。元々、子どもが特別好きなわけではなかったとしても、子どもを持たない人生を想像すると気持ちが揺らいでしまう。自分が死んだ後も、世の中につながる存在を残したい。そんな気持ちを持つ人も多いでしょう。

 私の専門はアメリカの家族法なのですが、アメリカでは、精子提供という選択肢は、それなりに一般的になりつつあります。何度もデートを繰り返して時間も感情も捧げたにもかかわらず、結果的に相手からお断りされる可能性もある。その点、ある程度、計画的に進められる精子提供は一つのオプションになりますよね。

 海外の精子バンクの運営に関わっている友人の話によると、日本でも精子バンクの利用者は増えているそうです。けれど、自然生殖と違って精子提供は「匿名」です。父を持ちえない子どもを人工的に作る、これがエゴだという批判はあるでしょう。私自身は「こういう子だから不幸な子」と括らず、具体的に考えたいとは思っていますが。

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