「これまでミステリー作品にどっぷり浸かることがあまりなかったんです。今回、僕が演じる雨村は、過去に交通事故を起こしているけれど、ある事件がきっかけで、その記憶を失っている。そこに現れた女性の存在によって、えたいの知れない恐怖に怯える役どころです。えたいの知れないものが、徐々に正体を現していく。そんな、ドラマならではの“次が楽しみになる展開”になっていると思います」

 常に新しいことに挑戦している印象があるが、「これまで自分の演じてきた経験が、周囲に対する信用にはつながっても、実績にはならないのが俳優業だと思っています。年齢を重ねていくと、演じられる役の幅は増えていくけれど、毎回違う人間なので、『過去にあれができたから、今回も大丈夫だろう』とはならない。キャリアに甘えないように、いつも挑戦していたいです」と冷静に話す。

 もっと若い頃は、「結婚は30までに」「30までには、日常会話に困らない程度の英会話はマスターしたい」など、30という年齢を、一つの区切りとして考えていたという。

「でも、30歳を目前にして、30以降、どう戦っていけるかのほうが大切だと思うようになりました。英会話の勉強も続けていますが、他にも、信頼できる師匠の元で殺陣を習ったり、積極的にアートギャラリーに足を運んだり。今はとにかく、体がいろんなことに触れたがって、いろんなものを吸収したがっているみたいで(笑)。そういう、本能的な欲求に素直に従うようにしています」

(取材・文/菊地陽子)

※週刊朝日  2019年3月15日号掲載
(年齢や肩書は当時のものです)