韓国では「韓流スター」や「イケメン俳優」という言葉が、ある種の揶揄をもって語られる傾向がある。演技力で勝負する正真正銘の「俳優」とはまた違った意味で語られる言葉で、アイドル的な人気を指す意味合いが込められている。

「冬ソナブームで大ブレークしたヨン様が、“韓流スター”で終わった人なのに対し、ヒョンビンは、“イケメン俳優”からの脱皮がしっかりできている稀有な存在。韓国が世界に自慢できる国民的スターです」(安部さん)

 韓流ドラマに詳しいライターの酒井美絵子さんは、作品選びに長(た)けた俳優でもあると分析する。

「『私の名前はキム・サムスン』(05年)、『シークレット・ガーデン』(10~11年)、『愛の不時着』と、社会現象になるほど話題になった出演作がこれで3作目。俳優として自分をどう見せるか、どう役の幅を広げていくかといった戦略がきちんと立てられている人だと思います」

 4位にはドラマ「天国の階段」(03~04年)で大ブレークした“涙の貴公子”ことクォン・サンウ(43)がランクイン。5位は、映画のヒット作も多いコン・ユ(41)。07年のドラマ「コーヒープリンス1号店」でブレーク。16年、映画「男と女」で注目を集め、同年、放送が始まったドラマ「トッケビ~君がくれた愛しい日々~」で人気を不動のものにした。「韓流ぴあ」の露木編集長は言う。

「北欧を舞台に、道ならぬ恋に突き進む男女の姿を描いた映画『男と女』で、久しぶりに火が付いたと思います。ちょうど同時期に大ヒットを飛ばしたドラマ『トッケビ』も始まり、コン・ユにハマる女性が続出。女性が“夢の中に出てきてほしい”と願うような色気のある俳優です」

 アンケートの自由記述欄で圧倒的に多かったのが、東方神起・JYJの元メンバーで、歌手で俳優のパク・ユチョン(34)。薬物問題などで物議を醸し、芸能界引退の意思を明らかにしたものの、オンラインを中心に活動を継続。そんな中でも多くの票数を集めた。

「アイドルと演技が両方できる“演技ドル”の立役者。スキャンダルさえなければ俳優として成功したと思うのですが……」(高橋チーフ)

(本誌・松岡かすみ、岩下明日香)

週刊朝日  2020年7月24日号より抜粋

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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