何がシニア世代をオンライン婚活に向かわせるのか。前出の篠藤氏が語る。

「婚活に駆り立てられる高齢者の多くに共通するのが、孤独感の深さです。焦燥感を背景に、婚活パーティーよりも多くの可能性を探れるマッチングアプリを利用していると考えられます。以前は『選ぶのはいいが選ばれる対象になるのは抵抗がある』という人もいたそうですが、若い世代でアプリが当たり前になり、時間差でシニア層でも試す人が徐々に増えたことで抵抗感が減ってきているのではないでしょうか」

 ただ、新たなツールの普及にはリスクも付きものだ。夫婦問題研究家の岡野あつこ氏(65)はこう注意喚起する。

「オンラインで多くの人と早く出会うことはコミュニケーションの練習にもなり、自信につながるでしょう。一方で出会うハードルが低い分、中毒性があります。相手の目的が結婚か恋愛かだけでなく、万が一、ビジネスへの勧誘が狙いではないか見極める必要があります」

 取材を進める中で、こんな印象的な話があった。東海地方のヨシオさん(仮名・77)は、人口の少ない地方在住。「周囲に適齢期の女性が少なかった」といい、独身を貫いてきた。結婚相談所を含め40年近く婚活をしているが、付き合ったのは2人だけ。現在、婚活アプリで毎月、限度いっぱいの60件の「いいね」を送っているが、「いいね」を返してくる女性は月に1人いるかいないかだという。

「それでも、いつかは結婚したいし、子どもを持つ夢もあきらめられない。女性はたくさんいるはずだけど、なかなかいい人はいない。死ぬまで婚活するつもりです」(ヨシオさん)

 ゲーテは73歳で少女に恋し、蓮如は80歳を過ぎて子どもを2人作った。「死ぬまで婚活」は、ますます当たり前になっていくのかもしれない。(井上有紀子)

週刊朝日  2020年7月24日号より抜粋