「本来であれば、異文化の中に飛び込んでもまれることで、いかに成長するかが一番大切。それをオンラインで完全に実現することは難しいが、同じような経験ができるよう取り組んでいる。オンラインをただの危機的な状況の対応策と見るのか、新しい形の教育ができるとポジティブに考えるかで教育の差が出ると思う」

 理系の大学・学部も、コロナ禍で大きな支障が生じている。実験をする授業が多いからだ。機材は大学にあるのに、入構が制限されて使用できない。前期の実験の授業を後期に先送りする大学・学部も多い。

 その中で実験の授業を含めて、オンラインで授業を進めているのが芝浦工業大(東京都)だ。全学生にオンライン授業対応のための臨時奨学金6万円を給付するなど、積極的に対応をしてきた大学の一つだ。

 どうやってオンラインでの実験をしているのか。工学部の3年生が受講する「機械工学実験」という授業をのぞいてみた。

「実験の結果は思ったとおりだった?」

「実生活でのイメージどおりのところもありましたが、何カ所か間違ったイメージで考えていました」

「間違ったと思わなくていいよ。予測してみて、実際には違うんだということを学べばいいんです」

 これはすべてZoomでのやりとりだ。

 この日の学生は10人。教員を補助するTA(ティーチング・アシスタント)も1人参加する。プライバシーなどを守るため、学生の顔は画面には映さない。授業の冒頭で教員が出席を取り、授業の概要を説明する。

 この日活用したのは、パワーポイントの資料とオンラインアンケートだ。資料には実験のプロセスが写真とともに説明されており、学生が各自読み進めていく。実験の動画などを見て学生は実験を疑似体験していく。

 資料の中には、「実験の概要は理解できましたか?」「このとき実験の結果はどうなると思いますか」「予測はあっていましたか」など理解度を確認する質問や、考えを促す質問が用意されている。学生は適宜、オンラインアンケートに回答を記入していく。教員は回答状況を見ながら、学生とコミュニケーションを取り、解説を補う。授業を担当した諏訪好英教授はこう語る。

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