「結構いっぱいありますねぇ。芝居が思うようにいかないとか、仕事で大変だとか。誰かにそれを話したくても話せる相手が周りに誰もいない。かつてそういう状況になってとてもつらいと思うことがありました」

 人気絶頂の11年3月、多くの芸能人が陸軍の芸能兵になるなか、陸軍より断然きついといわれる海兵隊を志願。ファンに惜しまれて入隊、軍隊に行った。いま考えると、それも役者人生に何がプラスになるかを緻密に考えたうえでの行動だったのだろう。

 12年末の除隊後は映画「コンフィデンシャル/共助」や「愛の不時着」などで本格的なアクションを披露。この3年間に映画とドラマに6本出演するなど精力的に活動をしている。

 いま世界中でヒョンビン・シンドロームが起こっているが、ヒョンビンはきっと、これまでのように、その現象も冷静に楽しんでいるだろう。

「愛の不時着」のヒロインはヒョンビンがこれまで選んだように、男性と互角に生き、仕事にも恋にも情熱的な女性だった。オフィシャルインタビューによると、ヒョンビンは、北朝鮮の将校リ・ジョンヒョクのどの部分を強調すれば、人物のキャラクターを魅力的につくりあげられるかを多面的に考えている。かつて「キム・サムスン」で役作りについて語っていたように。ただ、ジョンヒョクはこれまでの誰よりも本人に似ていると私は思う。最高のあたり役だ。

「キム・サムスン」から15年。3度の大ブームを起こしたスターは韓流のなかでも珍しい。でも偶然ではない。ヒョンビンが冷静に作品を選び、緻密に計算し、努力して、役をつくりあげたのだ。そしてどのラブストーリーも時代のちょっと先を走っている。ヒョンビン、すごい!

週刊朝日  2020年7月10日号より抜粋