大ヒットしている「愛の不時着」で北朝鮮の将校を演じているヒョンビン(37)。世界中の女性たちの心をわしづかみにしているが、あふれ出る優しさ、温かさは演技なのか、彼自身が醸し出すものなのか。過去2度、インタビューした朝日新聞文化くらし報道部記者・林るみさんが彼の魅力を振り返った。
【前編/「愛の不時着」で3度目のブレーク ヒョンビンの素顔は? 仕事観は?】より続く
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これまでさまざまな役を演じてきたが、どの役が一番自分に近いと思うかたずねると、答えに詰まった。
「それは難しいですねえ。どの役も自分と違うというのはないんです。自分のふるまい、自分のなかのものが、多かれ少なかれ、どんな役にも投影されていますから」
役柄の選択で面白いと思ったのは、ヒョンビンが選ぶ男性にはマッチョさが感じられないということだ。韓国の女性たちから圧倒的に支持をされるのは、そうした人物像にあるからではないか。「愛の不時着」で演じた軍人も肉体はたくましく強いのにマッチョさがまったく感じられなかった。
「私がマッチョになったら、どういう感じになると思います? でも、韓国の男性ならそういう志向は誰にでもあるとは思います。一般に肉体を鍛えたいという気持ちも強いかもしれません。僕の場合はあくまでも役次第です。筋肉をつけたり落としたりということも作品に合わせてやっていくつもりです」
テレビドラマだけでなく、映画にもコンスタントに出演、活動の幅をひろげてきた。当時は低予算のインディーズの映画にも積極的に出演した。
「いまの時代、社会ではとにかくスピードやヒット性が求められますが、それに合わせた作品ばかりに出ていると偏りかねない。自分にとってよくないんじゃないかって。小さいものならではの素晴らしさがあります。控えめだけど深い、そんな作品のよさを強調したい思いがあります。見る方々にとっても演じる側にとっても多様性は大事です」
10本以上のCMにも出演。人気ぶりは韓国で社会現象になっていた。ドラマ「私の名前はキム・サムスン」(2005年)のとき以上の大ブレークだった。韓国の女性たちからは圧倒的に支持されたが、そうした状況を冷静に見ていた。