──エリザベス・テイラーの出演した1949年版「若草物語」は見ましたか?

「見たわ。でもかなり以前のことなので、ぼんやりとしか覚えていない。私の印象に最も残っているのは、90年代の映画よ。私が生まれた年に公開になったから。33年版のキャサリン・ヘップバーンがジョー役をやった映画も見てみたい。パーフェクトなジョーだと思うわ。本作は、女性が男性的であること、男性が女性的であることについての映画だとも思うのよ。一人の人間の中に両方が存在する。私の中にも男性的な面と女性的な面があるし、またストレートな男性でも女性的な面を持っていると思う。その点についてこの映画は触れている。人間誰もが男性的な面と女性的な面を両方自由に表現できる社会になったら、とてもエキサイティングだと思う。この点についても触れた原作が150年前に書かれたなんて驚きだわ」

──作家を目指すジョーが執筆するシーンが多く登場します。あなた自身、物を書くのは好きですか?

「好きだけど、あまり書く気分になれないの。だから今年は努力して書くようにしたい。書くという作業には、かなり厳しい自己規制が必要だと思うから。それに比べると演技はずっと簡単。というのも感じたままを演技にすればいいだけ。その後は他の人が演技を編集してくれるわけだから。ところが書くというのは、100%自分から出てこなければならない」

──若い頃からアカデミー賞を始め多くの賞にノミネートされたり受賞したりしています。

「ノミネートされた映画や受賞した映画が注目されることが、最も重要だと思う。例えば映画を見る側として、ポスターに七つの賞にノミネートされたとあれば、見てみようかしらと思う。それが何よりも重要だと。また授賞式では他の映画関係者と出会うのも貴重な体験。同じような体験をした仲間が、それぞれ異なるプロジェクトをつくりあげた他のグループ、『レディ・バード』だったり、『スリー・ビルボード』だったり……。そんなクールな仲間たちが一堂に会する場だから。そこで私たちはお互いを尊敬し合い、連帯感が生まれる。特に2018年、フランシス・マクドーマンドがアカデミー賞主演女優賞を受賞し、ステージでスピーチしたときなど、私たちが一体になった瞬間だった。驚くべき体験だったわ」

(取材と文/高野裕子)

週刊朝日  2020年7月24日号