「都内1号店を吉祥寺にしたのは、住んでいる人や働いている人、訪れる人がバランスよく混在し、年齢層も幅広いと感じたからです。当社がめざしている『ステーキの大衆化』を実践する場として最適だと考えました」(広報担当者)

 新型コロナの影響で開店時期が当初計画より遅れたものの、1日当たり来店者数は300~350人を維持しているという。

 同社の特徴もまた、手頃な価格帯と効率的な店舗運営にある。例えば、赤身のミスジ肉を、溶岩石を使ったプレートで焼き上げる看板メニュー「やっぱりステーキ」は、150グラム1千円程度。「いきなり!ステーキ」の中心メニューと比べても、少量から注文できるうえ割安だ。ラーメンの「替え玉」のように、ステーキを「替え肉」として追加注文できる。ライスやスープ、サラダもセットで付き、食べ放題だ。支払いは食券制で、サラダや飲み物をセルフサービスとするなど省力化している。

 開店まもない吉祥寺店だが、「いきなり!ステーキ」の店から歩いて数分と近い距離にある。店名についても「似ているね」と客から言われることが多い。そもそも、店名は沖縄の食文化に由来するのだと、前出の広報担当者は説明してくれた。

「沖縄には、お酒を飲んだ最後にステーキでシメる文化があります。『シメはどうする?』『やっぱりステーキでしょ!』という、いつもの仲間同士で繰り返す掛け合いが、そのまま店名になりました。『いきなり!ステーキ』さんは、もちろん業界を切り開いた先駆者的存在で尊敬しています。今後も一緒にステーキ業界を盛り上げていければと思います」

 改めてペッパーフードサービスに、「やっぱりステーキ」の東京進出について聞いた。

「当社も、もともと日本にステーキ文化を根づかせたいという思いをもって展開してきました。『やっぱりステーキ』さんをはじめ、いろいろなステーキチェーンが元気になるのは業界全体に追い風となります。日本でも、ステーキを食べることが普段の食事の選択肢に入るようになってほしい」(広報担当者)

 新型コロナで、外食チェーンは軒並み売り上げの減少に苦しむ。はたして今後、ステーキチェーンの“共存共栄”が進むのか。新たな生活様式としてステーキ文化がさらに根付くのか、注目したい。(本誌・池田正史)

*週刊朝日オンライン限定記事

著者プロフィールを見る
池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

池田正史の記事一覧はこちら