「6千字のストーリーはカメラワークが速くて、人の表情や細部までは撮れない。10万字あると、カメラワークを遅くして、表情も周りの雰囲気も書ける。でも、遅くするにはすごいテクニックが必要だということを実感しました」

 ウェブでのカツセさんの仕事は、ターゲットの人たちが同じ感想を持てるように計算して制作することが多いという。それに対して長文の本では、そこまで読者の反応をコントロールするのは難しい。いろいろな人から様々な感想が寄せられるのが、本のおもしろさだと感じている。

 いつかは小説を書きたいと思っていた。出版社から依頼されて、30代ではまだ早いという気持ちもあったが、人生で何度も訪れるチャンスではないと、2年半かけて書き上げた。

「今は話題に乗ってるけど、今後は読んだ人の感想で状況が変わってくる。発売1カ月後にどういう評価をされているかが勝負だと思っています」

(仲宇佐ゆり)

週刊朝日  2020年7月17日号