そして今進んでいるのが、民法や不動産登記法の大がかりな改正だ。土地の所有権を手放すための仕組みの創設や、今まで制限がなかった遺産分割を話し合う期限を10年に設定すること、相続登記を義務化することなどが柱だ。登記をしなければ罰金を科すことなども検討されている。

 民法や相続に詳しい吉田修平弁護士は「もともと民法には所有権を放棄すること自体、規定がありませんでした。改正されれば、物権法や相続法など非常に広い分野に影響がおよびます」と解説する。

「所有者がいなくなれば、土地は国庫に納められ、国はその土地の管理責任を負う。加えて、その土地から税金を得ることもできなくなってしまいます。国の負担が重くなるということですから、そう簡単には放棄ができないような仕組みになると思います」

 土地の所有権などを巡る紛争がないほか、境界線がはっきりしている、所有者以外の抵当権が設定されていないといった厳しい条件を設定することなどが想定されるという。

 いずれにせよ、空き家や山林など「いらない不動産」の処理をあやふやにしておくことは、今後難しくなる。一歩間違えば自分や親族の家や土地が損失を生むだけの「負動産」になりかねない。思い立ったら早めに手を打つ算段に取りかかろう。(本誌・池田正史)

週刊朝日  2020年7月17日号

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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