つばめ投資顧問の栫井駿介代表はこう指摘した。

 だが、日本の財政は刻一刻と悪くなっている。今年3月末の借金は約1114兆円。これは普通国債や財投債などの国債のほか、借入金や政府短期証券を合わせたものだ。一方、財務省のホームページによると、2020年推計の借金の国内総生産(GDP)比で、日本は237.6%に達する。133.7%のイタリアや、108%ほどの米国など、世界の国々と比べても突出している。

 そしていま、政府が発行する大量の国債を最終的に引き受けているのが日本銀行だ。政府は予算編成で大量の国債を発行する。それを直接引き受けるのは民間金融機関などだが、最終的に日銀が金融政策の一環として買い入れている。

 経済評論家の藤巻健史さんは、日銀の健全性がコロナショックで深刻になっていると警告する。

「私は日銀がいつかは債務超過になり、日本経済が大混乱すると訴えてきた。それが現実になろうとしている。金融市場で株式、円、債券のトリプル安になり、第2次世界大戦直後のような混乱が生じかねない。お札(日本銀行券)が事実上“紙くず”になり、新しいお札が登場することも想定される」

 藤巻さんは米モルガン銀行時代に「伝説の為替ディーラー」と呼ばれ、参議院議員として金融政策や財政の問題点を追及してきた。藤巻さんが最も懸念するのが長期金利の上昇だ。長期金利が上昇すると、コインの裏表の関係で、国債価格が下落するためだ。長期金利があとわずか0.3%上昇すると日銀が債務超過に陥るとみており、「そんなことが予想される中央銀行の通貨は暴落でハイパーインフレ一直線」だという。

 日銀の19年度の業務概況書によると、保有する長期国債の運用利回りの平均が0.257%。長期金利がこれを上回って仮に0.3%になると、国債が暴落し、大量保有する日銀の資産の評価損が拡大する。ちなみに、いまの10年もの国債の利回りは限りなくゼロに近い水準だ。

 国際会計基準のハイパーインフレとは、3年間で累積100%(年率26%)以上の物価上昇を指す。国や通貨の信認がなくなり、ハイパーインフレを招いた事例はいくつもある。

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