イラスト=GettyImages
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寝起きの際、腰や脚に負担が少ない介護ベッド。記者の父母宅でもレンタルし、助かっている (GettyImages)
寝起きの際、腰や脚に負担が少ない介護ベッド。記者の父母宅でもレンタルし、助かっている (GettyImages)
遠距離介護を乗り切る心得11カ条 (週刊朝日2020年7月10日号より)
遠距離介護を乗り切る心得11カ条 (週刊朝日2020年7月10日号より)
遠距離介護あるある。コロナ禍編 (週刊朝日2020年7月10日号より)
遠距離介護あるある。コロナ禍編 (週刊朝日2020年7月10日号より)

介護」は突然、やってくる。そう痛感したのは、2年前の春のこと。80歳を超えた母が大腿骨を骨折し、2カ月入院した。

【遠距離介護を乗り切る心得11カ条はこちら】

「お母さんが救急搬送されたって……」

 病院から突然の連絡を受けたときは、正直、気が動転した。

 それからというもの、母は要介護、85歳を超えた父は要支援と認定され、一人息子の記者は「遠距離介護」をすることになった。齢を重ねても元気な両親だったから、介護なんてまるでひとごとだったのだが。

 あの入院以来、1カ月に一度ほど四国に帰り、両親の面倒をみている。まとまった休みがあれば、真っ先に帰った。

 年末年始、お盆、ゴールデンウィークなど少し長い休みには、ケアマネジャーに普段の状況やこれからの介護方針など聞くこともあり、帰省が欠かせなくなった。家の片付けをまとめてできるし、親を連れて少し遠くへ出かけることもできる。連休は遠距離介護をする身にとって、とても大事な日々なのである。

 そうこうして介護のありようを探るうちに、境遇が重なる人たちでつくる「離れて暮らす親のケアを考える会・NPO法人パオッコ」とつながりができた。月に1回程度、実際に遠距離介護をしている人たちが、悩みや問題点を話し合うサロンを開き、現在のコロナ禍の中でも遠距離介護についてリモートで語り合っている。

 僕も僕なりに親の介護ができるようになってきたのでは……ひそやかな自負は、今春、あっけなく打ち砕かれた。

 大型連休前、例の不要不急の移動自粛要請だ。新型コロナウイルスの感染防止のため、県境をまたぐ移動はままならなくなった。親の介護は必要なことだと考え、帰省しようかと最後まで逡巡したが、やはり取りやめた。

 パオッコの代表、太田差惠子さんは言う。

「遠距離介護をしている人の多くは帰省しませんでした。それは不要不急だからではなく、親に感染させたらいけないと考えたからです」

 記者もそうだ。ただ内心を明かすと、外出自粛が要請され、親の面倒から解放される、と少しほっとしている自分がいたのも事実である。知らぬうちに、けっこう疲労も蓄積しているのかもしれない。遠距離介護に終わりはみえないし。

 太田さんは言う。

「遠距離介護で問題になるのは大きく三つ。お金、時間、体力です。加えてコロナ禍で別の問題も噴出し、遠距離介護をする人はますます大変になっています」

 そもそも横たわる問題はお金のことだ。

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