石井:私としてはやるべきことをやったし、書き手としての務めを果たしたという気持ちでいて、あとは皆さんの判断ですよね。4年前の都知事選のとき、小池さんは「悪のかたまりの自民党、オッサン政治と闘います!」と言った。女の政治家は善良でお金にクリーンで正義感にあふれている、と無条件に思い込んでしまう女性有権者の心理をうまく利用したと思うんですね。

林:またあのときは、石原慎太郎さんがいい役をやってくれたんですよね。「大年増の厚化粧」とか言って。あれを見て、私は「これで小池さん圧勝だ」と思いましたよ。

石井:小池さんは、日本人の西洋コンプレックスとか、縦社会の歪みとか、男性優位な社会構造のスキをついてうまくよじ登ってきて、あと一歩で総理というところにまで来た人だと思います。その責任は、私たち一人ひとりにある。私は小池さんを批判するというより、むしろそんな私たちの社会はどういう社会なのか、と。それを言いたかったんです。

林:ええ。本当にそうだと思います。しかしこの本を読んで、あらためて小池さんっておもしろい人だなとも思ってしまいました。皆さん「モンスターみたいな女だ」って言うけど、私、石井さんの本を読んでも決して小池さんが嫌いになれないんですよ。幼いころからの小池さんの人生を見せていただくと、「こうなったのもわかるな。こういう人生も、ありかもしれない」って思ってしまって、つい一票入れちゃうかも(笑)。

石井:なるほど(笑)。

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(構成/本誌・松岡かすみ、編集協力/一木俊雄)

週刊朝日  2020年7月10日号より抜粋