ウェブ会議システム「Zoom」で対談した池上彰氏(左)と佐藤優氏 (撮影/吉崎洋夫)
ウェブ会議システム「Zoom」で対談した池上彰氏(左)と佐藤優氏 (撮影/吉崎洋夫)
人種差別解消などを訴えるデモ行進=ニューヨーク (c)朝日新聞社
人種差別解消などを訴えるデモ行進=ニューヨーク (c)朝日新聞社

 いまだ拡大する新型コロナウイルスの影響は世界情勢にも変化をもたらしている。ジャーナリストの池上彰氏と元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏は、国家機関の強化と格差の拡大を指摘。さらに2人はさまざまな問題が“加速”すると話す。

【写真】人種差別解消などを訴えるデモ行進

<前編より続く>

*  *  *

佐藤:陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」をやめたら、それに派生する国内需要が減るのでGDPが下がります。それでも国民生活にも安全保障にも関係ないからやめる。そういうことができたのは今回のコロナと関係したと思いますよ。雰囲気が変わっているんです。

池上:アメリカをはじめ世界各地で起こっている人種差別反対運動も、フランスの歴史家・人口学者、エマニュエル・トッド氏の言う「すでに起きていたことの加速」と言えますね。アメリカでは現在、ワーッと盛り上がっています。一つはロックダウン(都市封鎖)をされていることによる様々な不満が背景にあるんだろうと。

 同時に、感染症ってウイルスはすべての人に平等に襲いかかってくるんだけれども、治療を受けられるか、生き延びられるかというところで、所得格差がはっきり出てしまう。アメリカの場合、特に黒人の死亡率が非常に高い。こういうところでも格差が出ているんだなとみんなが思っている時に、その黒人が白人の警官によって殺されているという「見える化」が起きてしまった。これがSNSで一気に拡散されることになって、一挙に突き出してきたんだと思います。

佐藤:それから、日本人、韓国人、中国人がアメリカでかなり嫌がらせを受けてますからね。あるいは、池上さんが『知らないと恥をかく世界の大問題11 グローバリズムのその先』(角川新書)のところで、自身の経験として、あれはキューバでしたっけ。

池上:テレビのロケでキューバに行った時に、「コロナ、コロナ、コロナヴイルス」ってはやし立てられましたね。

佐藤:池上さんは、黄禍論(19~20世紀にあった黄色人種への差別)が頭をもたげているということを書いていたんだけども、我々は非常に注意したほうがいいと思います。実は黒人の問題じゃなくて、日本人、韓国人、中国人を含め、アジア人にも向かっているということなんです。日本の保守派の一部の人はね、武漢ウイルスとかそういった呼び方をするのだけど、とんでもない話で。特に我々自身もそこで被害を受ける可能性があるわけですからね。

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